スペイン文学

スペイン文学の概要

スペイン文学は、スペイン語で書かれた文学作品、特にスペインの作家による作品を指します。19世紀以降のラテンアメリカにおけるスペイン語作品については、ラテンアメリカ[[文学]]として別途扱われます。本稿では、スペインにおける文学の歴史を中世から20世紀にかけて、主要な作家や作品、文学運動を時代別に概観します。

中世

中世スペイン文学は、主に口承文学に支えられ発展しました。代表的な形式としては、ハルチャ、モアシャハ、セヘルといったアラブの影響を受けた詩形や、武勲詩、吟遊詩人による騎士道物語が挙げられます。この時代における代表的な作品として、作者不詳の『わがシッドの歌』があげられます。その他、ゴンサロ・デ・ベルセオ、アルフォンソ10世、ドン・フアン・マヌエル、フアン・ルイスといった作家が活躍しました。

15世紀

15世紀は、ロマンセや死の舞踏といった新たな詩形式が登場した時代です。エンリケ・デ・ビリェーナ、イニゴ・ロペス・デ・メンドーサ、フアン・デ・メーナ、ホルヘ・マンリーケといった詩人が活躍し、スペイン語文学の基礎を築きました。また、この時代には演劇も発展し始め、フアン・デル・エンシーナやルーカス・フェルナンデスなどの劇作家が登場しました。

16世紀（スペイン・ルネサンス）

16世紀は、スペイン・ルネサンス、あるいはスペイン黄金世紀と呼ばれる時代で、イタリア詩の影響を受けながら、神秘主義文学が隆盛しました。ガルシラーソ・デ・ラ・ベガ、サンタ・テレサ・デ・ヘスス、フライ・ルイス・デ・レオンといった詩人が活躍しました。小説においては、騎士道小説、牧人小説、モーロ小説といったジャンルが花開き、『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』といったピカレスク小説も登場しました。そして、何よりもミゲル・デ・セルバンテスの『ドン・キホーテ』が、この時代のスペイン文学、ひいては世界文学の金字塔として燦然と輝き続けています。散文では、アメリカ大陸の発見、征服、植民を記録したクロニカや、エラスムスの思想の影響を受けた作品が多数執筆されました。

17世紀（スペイン・バロック）

17世紀もスペイン黄金世紀は継続し、バロック様式が文学に反映されました。詩においては、コンセプティスモ（奇知主義）とクルテラニスモ（誇飾主義）が特徴的な表現様式となりました。ルイス・デ・ゴンゴラ、フランシスコ・デ・ケベードといった詩人が代表的です。小説・散文では、ビセンテ・エスピネル、バルタサール・グラシアンなどが活躍しました。演劇では、ロペ・デ・ベガ、ティルソ・デ・モリーナ、ペドロ・カルデロン・デ・ラ・バルカといった巨匠が活躍し、スペイン演劇の黄金時代を築き上げました。

18世紀（啓蒙主義と新古典主義）

18世紀は啓蒙主義と新古典主義の時代で、理性と秩序が重視されました。イグナシオ・デ・ルサン、フェリックス・マリア・デ・サマニエゴ、トマス・デ・イリアルテといった詩人が活躍しました。散文では、ベニート・ヘロニモ・フェイホー、ホセ・ガダルソ・イ・バスケス、ガスパール・メルチョール・デ・ホベジャーノスといった啓蒙思想家や、優れたエッセイストが数多く輩出されました。演劇では、レアンドロ・フェルナンデス・デ・モラティンが新古典主義的な作品を発表しました。

19世紀（ロマン主義、写実主義、自然主義）

19世紀には、ロマン主義、写実主義、自然主義といった様々な文学運動が興隆しました。ホセ・デ・エスプロンセーダ、グスタボ・アドルフォ・ベッケル、ロサリーア・デ・カストロといったロマン主義の詩人が活躍した一方、写実主義、自然主義の作家としては、ベニート・ペレス・ガルドス、レオンポルド・アラス（クラリン）、エミリア・パルド・バサンなどが活躍し、リアリティを追求した作品を発表しました。演劇においても、様々な作家が活躍しました。

20世紀

20世紀は、98年世代、ノベセンティスモ、27年世代といった様々な文学運動が展開されました。98年世代では、ミゲル・デ・ウナムーノ、ピオ・バローハ、アントニオ・マチャードらが代表的な作家です。27年世代では、フェデリコ・ガルシア・ロルカ、ビセンテ・アレイクサンドレ、ラファエル・アルベルティといった詩人がスペイン詩に大きな影響を与えました。スペイン内戦後、戦後のスペイン文学も、様々な作家によって豊かさを増していきました。

主要な賞

スペイン文学を代表する賞としては、セルバンテス賞、ナダール賞、プラネータ賞、ビブリオテーカ・ブレーベ賞、アルファグアラ賞などが挙げられます。

もう一度検索