スペンドスリフト

スペンドスリフト：ベルモントの英雄とその血脈

1876年から1900年にかけて活躍したアメリカ合衆国の競走馬、スペンドスリフト。彼は、1879年のベルモントステークス制覇という輝かしい実績を残しただけでなく、種牡馬としても大きな成功を収め、現代競馬に多大な影響を与えたサラブレッドです。その生涯と功績を紐解いていきましょう。

黎明期：恵まれた血統と波乱の始まり

ケンタッキー州ウッドバーン牧場で生まれたスペンドスリフトは、イギリス産の名種牡馬オーストラリアンを父に持ち、競走馬として活躍したアイドルワイルドを全姉に持つサラブレッドでした。兄にも活躍馬がおり、その血統は彼の輝かしい未来を予感させるものでした。栗毛の美しい馬体、額の菱形の星、白く輝く後肢の繋など、容姿も人々を魅了しました。気性はやや荒かったものの、乗りやすい馬であったと伝えられています。

1歳時、スペンドスリフトは1000ドルでエルメンドルフ牧場のダニエル・スワイガートに購入されました。「浪費家」を意味するその名前は、スワイガート夫人の浪費癖に由来する、少しユーモラスなエピソードです。これに対し、夫人はスペンドスリフトの全弟に「けち」を意味するマイザーと名付けるなど、夫婦間の遊び心も垣間見えます。

2歳時の快進撃：無敗のシーズン

2歳となった1878年、スペンドスリフトはケンタッキー州とテネシー州を舞台にデビュー。デビュー戦から連勝を重ね、不良馬場を味方につけ4馬身差での勝利を飾りました。続くサンフォードステークスでも勝利し、勢いは留まるところを知りません。ヤングアメリカステークスでは、後のケンタッキーダービー優勝馬ロードマーフィーを破る金星を挙げました。2歳シーズンを無敗で終えた彼の活躍は、東海岸の競馬関係者の注目を集め、高額な取引が持ちかけられるまでに至ります。最終的に15000ドルでジェームズ・ロバート・キーンに売却され、エドワード・ダドリー・ブラウンからトーマス・ピューライヤーへと調教師も変わりました。

3歳時の頂点：ベルモントステークス制覇

3歳時（1879年）のスペンドスリフトは、転厩後すぐにウィザーズステークスに出走。強豪ハロルドを破るも、ダンスパーリングに敗れ、初めての敗北を経験しました。しかし、彼はすぐにその雪辱を果たします。5日後に行われたベルモントステークスで、再びハロルドを破り、優勝を掴み取りました。続くロリラードステークス、ジャージーダービーでも勝利し、絶好調を維持していました。しかし、夏のトラヴァーズステークスでは脚の不調も響き、ファルセットに敗れるなど、苦戦を強いられます。それでもチャンピオンステークスでは古馬ブランブルを破るなど、実力を見せつけました。脚の故障によりシーズン途中で競走生活を終えたものの、3歳シーズンは彼の競走馬としての頂点であったと言えるでしょう。

種牡馬として：血統の継承

4歳、5歳とイギリス、アメリカで競走生活を続けましたが、思うような結果を残せませんでした。1882年に引退し、種牡馬となりました。種付け料は50ドルと控えめなスタートでしたが、彼の血統は多くの優秀な競走馬を生み出しました。キングストン、ランプライター、ストワウェイ、アサイニー、ラザローネ、セリカ、ヘイスティングズ、レディイネスなど、数々のステークス勝ち馬を輩出したのです。中でもキングストンとヘイスティングズはアメリカリーディングサイアーにも輝き、彼の種牡馬としての偉大さを証明しました。

現代への影響：マンノウォーの祖先

スペンドスリフトの血統は、現代競馬においても重要な役割を果たしています。彼の血脈は、20世紀最高の競走馬と称えられるマンノウォーへと受け継がれ、その遺伝子は現代のサラブレッドにも流れています。

彼の華麗なる競走生活、種牡馬としての成功、そして現代競馬への多大な貢献。スペンドスリフトは、まさに競馬史に名を刻む偉大なサラブレッドであったと言えるでしょう。彼の物語は、競走馬としての栄光だけでなく、血統という形で未来へと受け継がれていく生命力を感じさせてくれます。

もう一度検索