スミス都へ行く

『スミス都へ行く』（原題: Mr. Smith Goes to Washington）は、1939年にコロンビアピクチャーズが製作したアメリカ映画です。フランク・キャプラが監督を務め、ジェームズ・ステュアートが主演を務めました。この映画は、ルイス・R・フォスターの原案『モンタナから来た紳士』を基に、政治腐敗に立ち向かう一人の青年の姿を描いた社会派ドラマの傑作として知られています。

あらすじ

物語は、西部のとある州で上院議員が急死したことから始まります。その州では、新聞社の経営者であるジム・テイラーとその一派が、州知事を含む政治家たちと結託し、大規模なダム建設に関する不正を企んでいました。彼らは、政府のダムを誘致するために、事前に土地を買い占め、その土地を高値で政府に売りつけることで莫大な利益を得ようとしていました。

後任の上院議員を選ぶにあたり、テイラー一派は自分たちの操り人形にできる人物を探していました。そこで、ボーイスカウトの団長を務める青年、ジェファソン・スミスに白羽の矢が立ちます。スミスは、子供たちからの人気が高く、理想に燃えているものの、政治には無知で単純であったため、テイラー一派にとって都合の良い人物でした。スミスは上院議員に指名され、首都ワシントンへと旅立ちます。

ワシントンでスミスは、同州選出のペイン上院議員と行動を共にすることになります。ペインは、かつてスミスの父と志を同じくする親友であり、巨悪と戦うジャーナリストと弁護士でした。スミスはペインに「一人の人間が組織と戦って勝つことはできないのか」と問いますが、ペインは「できない」と答えます。

しかし、ワシントンでの生活はスミスにとって衝撃的なものでした。マスメディアはスミスを嘲笑し、能無し扱いします。スミスは失意の中、ペインに頼り、少しでも政治家らしいことをさせてほしいと懇願します。ペインはスミスに、彼が以前から希望していた少年のためのキャンプ場建設の法案を作成することを提案します。

スミスは、女性秘書サンダースの助けも借りて法案を作成しますが、そのキャンプ場の建設予定地が、実はテイラー一派がダム建設のために買い占めようとしていた土地だったことから、事態は急変します。スミスは、自分が尊敬していたペインがテイラー一派と手を組んでいることを知り、絶望します。

テイラーとペインは、スミスに法案の撤回を要求しますが、スミスは拒否します。すると、ペインはスミスを告発し、スミスが不正を働いているという嘘の証拠をでっち上げ、スミスを追い詰めます。スミスは絶望し、反論の機会を放棄しますが、サンダースに叱咤され、再び立ち上がります。

翌日、スミスは上院議場に現れ、議事妨害(フィリバスター)を開始します。25時間にも及ぶ演説の中で、彼はアメリカの自由の理想を語り続け、ダム計画の不正を暴露します。地元州の新聞やラジオ局は、テイラーの命令でスミスの演説を報道しませんでしたが、スミスは諦めずに語り続けます。

スミスの演説に心を動かされたペインは、良心を取り戻し、自らの不正を告白します。そして、スミスの無実を証明し、物語は幕を閉じます。

映画の特徴

この映画は、政治腐敗という社会問題を背景に、一人の人間の勇気と正義を描いた作品です。ジェームズ・ステュアートの純粋で熱い演技は、観客の心を強く揺さぶります。また、フランク・キャプラ監督の社会への批判的な視点も、この作品を傑作たらしめている要因の一つです。映画の終盤におけるスミスの議事妨害は、この作品のハイライトであり、観る者に大きな感動を与えます。

キャスト

ジェフ・スミス：ジェームズ・ステュアート（日本語吹替：堀勝之祐）
サンダース秘書：ジーン・アーサー（日本語吹替：此島愛子）
ペイン上院議員：クロード・レインズ（日本語吹替：千葉耕市）
ジム・テイラー：エドワード・アーノルド

受賞歴

第12回アカデミー賞では、作品賞を含む11部門にノミネートされ、原案賞を受賞しました。また、主演のジェームズ・ステュアートは、第5回ニューヨーク映画批評家協会賞で男優賞を受賞しています。

テーマ

この映画は、正義とは何か、そして、社会の不正に立ち向かう勇気の大切さを教えてくれます。また、個人の力は小さくても、信念を持って戦えば、大きな組織にも打ち勝つことができるという希望を与えてくれます。

スミス都へ行く