スリランカの国章

スリランカの国章は、スリランカ民主社会主義共和国政府が行政や外交などの公式な場で使用する正式な紋章です。現在の国章は1972年に制定され、スリランカの歴史と文化を象徴する要素が組み込まれています。

紋章のデザイン

国章の中央には、右前足で剣を持つ金色のライオンが描かれています。このライオンは、15世紀から19世紀初頭にかけて存在したキャンディ王国の王旗から引用されたもので、スリランカの国旗にも同じ意匠が用いられています。ライオンはマルーン色の円の中に配置され、その周りをスリランカの国花である蓮の花の金色の花びらが囲んでいます。

また、ライオンの下には伝統的な穀物壷があり、そこから豊穣を象徴する稲穂の束が左右に伸び、蓮の花を取り囲むように描かれています。

紋章の最上部には法輪（ダルマチャクラ）が配置されており、これは国家の重要な側面として正義による支配と仏教の存在を表しています。紋章の両脇には、シンハラ人の伝統的な象徴である太陽と月が配されています。

以前の国章

スリランカがイギリスの植民地であった時代、現在の国章とは異なる紋章が使用されていました。イギリス領セイロン時代には、イギリスの国章に加え、植民地独自の象徴としてセイロンゾウとココヤシの木を組み合わせた紋章や、仏塔（ストゥーパ）とセイロンゾウを組み合わせた紋章が用いられました。

1948年にセイロンがイギリスから独立し、英連邦王国セイロンとなった際に、新たな国章の制定が必要となりました。国章制定委員会が設置され、1952年にはセイロン・ドミニオンの国章が制定されました。この国章には、キャンディ王国の王旗から引用された「マルーンの背景に、右前足で剣を持った金色のライオンが大股で歩く」という意匠が採用され、その周囲を金色の蓮の花びらが飾りました。クレストにはセイロンの王冠（キャンディ王国の王冠に由来）が描かれ、下部のバナーにはシンハラ語・タミル語・英語でセイロンの国名が表記されていました。

現在の国章の制定

1972年、セイロンは共和制に移行し、スリランカ民主社会主義共和国となりました。この際、文化大臣であり、国旗・国章デザイン委員会議長であった政治家、ニッサンカ・ウィジェヤラトネ氏の提案により、現在の国旗と国章が制定されました。実際のデザインは、社会的に尊敬されていた高僧、マパラガマ・ウィプラサラ・マハ・テラによって手がけられました。

この新しい国章は、キャンディ王国の伝統的な意匠を継承しつつ、仏教の象徴やスリランカの豊かな自然を表現したもので、国家のアイデンティティを強く示すものとなりました。現在の国章は、スリランカの歴史、文化、そして国民の精神を象徴する、非常に重要な紋章として尊重されています。

スリランカの国章は、そのデザインに込められた深い意味と歴史的な背景から、スリランカという国を理解する上で欠かせない要素となっています。

関連項目

国章
国章の一覧
スリランカの国旗

外部リンク

（[英語]]）[スリランカの国章

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