スルフォロブス目

スルフォロブス目（Sulfolobales）

スルフォロブス目、別名サルフォロバス目（学名：Sulfolobales）は、クレン古細菌に属するテルモプロテウス綱に分類される微生物グループです。この目は、主に陸上にある極めて特殊な環境、具体的には火山活動に伴う温泉や熱水泉、あるいは硫黄を含む鉱山などから発見されることがほとんどです。

極限環境への適応

スルフォロブス目のメンバーは、「好熱好酸菌」として知られ、生命にとって非常に厳しいとされる強酸性かつ高温の環境に特化して生息しています。彼らの生育に適した条件は、一般的にpH1から5という強い酸性範囲と、50度から90度という高温域です。驚くべきことに、この目の中にはさらに極端な条件に耐えうる種も存在し、例えばAcidianus sulfidivoransはpH0.35という桁外れの酸性下で、Acidianus infernusは96度という水の沸点に近い温度でも増殖能力を示します。このような極限環境への適応力により、陸上の酸性熱水泉が存在する場所であれば、世界中の多くの地域でスルフォロブス目の微生物を見つけることができます。ただし、海に存在する熱水噴出孔などの海洋環境からの分離報告は極めて稀です。

代謝の特徴：硫黄利用

スルフォロブス目に属する全ての微生物に共通する重要な特徴は、何らかの形で硫黄化合物を代謝に利用することです。このグループの中で最もよく知られている属であるスルフォロブス属（Sulfolobus）は、硫黄が存在しない環境でも他の有機物を使ってエネルギーを得る従属栄養的な性質も持ち合わせますが、自然界では主に無機硫黄化合物を酸化することでエネルギーを獲得し、同時に大気中の二酸化炭素を取り込んで自身の細胞を構築する「硫黄酸化菌」として機能していると考えられています。アシディアヌス属（Acidianus）も硫黄酸化を行いますが、さらに代謝の多様性を示します。この属の微生物は、硫黄と水素ガスが同時に存在する条件下であれば、酸素が存在しない嫌気的な環境下でも生育できる能力を持っています。

酸素の利用に関しては、スルフォロブス目に含まれる種の大多数が、生命活動に酸素が必須である「偏性好気性」であるか、または酸素があってもなくても生育できる「通性好気性」を示します。

形態と細胞構造

スルフォロブス目の微生物は、一般的に直径が1マイクロメートルから3マイクロメートル程度の大きさを持ち、決まった形を持たない不定形の球菌として観察されます。細胞の表面からは、しばしば丸みを帯びた突出部が見られます。細胞壁の構造としては、グラム染色では陰性を示し、S層と呼ばれる特殊なタンパク質層で覆われています。細胞膜は、極限環境に適応するための特徴として、一般的な生物の細胞膜とは異なり、テトラエーテル脂質から構成される一重膜となっています。また、多くの種が細胞の表面に鞭毛を持っており、これにより水中を泳ぎ回る運動能力を示します。

分類

系統解析の結果から、スルフォロブス目は、同じクレン古細菌のテルモプロテウス綱に属するデスルフロコックス目（Desulfurococcales）やアキディロブス目（Acidilobales）を含むクレードの姉妹群に位置すると考えられています。この目には、主にスルフォロブス科（Sulfolobaceae）が属しており、その下にいくつかの属が含まれています。各属は、生息環境や代謝特性において、それぞれ独自の特徴を持っています。

主要な属と酸素要求性は以下の通りです：

スルフォロブス属（Sulfolobus）：偏性好気性
アシディアヌス属（Acidianus）：通性嫌気性
メタッロスパエラ属（Metallosphaera）：偏性好気性
スティギオロブス属（Stygiolobus）：偏性嫌気性
スルフォディイコックス属（Sulfodiicoccus）：偏性好気性
スルフリスパエラ属（Sulfurisphaera）：通性嫌気性
スルフロコックス属（Sulfurococcus*）：偏性好気性

これらの微生物は、地球上の極端な酸性・高温環境における硫黄の循環など、物質代謝において重要な役割を果たしています。

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