スロボダン・プラリャク

スロボダン・プラリャク：紛争の影、法廷の終焉

スロボダン・プラリャク（1945年1月2日 - 2017年11月29日）は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争においてクロアチア防衛評議会 (HVO) の幹部として重要な役割を担った人物です。紛争終結後、彼は旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷 (ICTY) で人道に対する罪に問われ、禁固20年の判決を受けました。その判決直後、彼は法廷で「私は戦争犯罪人ではない」と叫び、服毒自殺を遂げました。この衝撃的な出来事は、ICTYのウェブサイトとバルカン半島で生放送され、世界中に大きな衝撃を与えました。

生涯と経歴

プラリャクは、現在のボスニア・ヘルツェゴビナ南部にあたるチャプリナで生まれました。彼は学問にも秀でており、1970年から1972年にかけてザグレブ大学で4つの学位を取得しました。紛争以前は、1970年代から1980年代にかけて、哲学や社会学の教師、演劇の演出家、テレビ映画やドキュメンタリーのプロデューサーとして多岐にわたる活動を行っていました。

1991年にユーゴスラビア紛争が勃発すると、プラリャクはクロアチア軍に加わり、その能力を発揮して少将に昇進しました。1993年には、クロアチア防衛評議会 (HVO) の司令官に就任し、軍事的な指導力を発揮しました。

ICTYの判決と自殺

紛争終結後、実業家として活動していたプラリャクは、ICTYで人道に対する罪に問われることになります。2004年にICTYの法廷に出頭しましたが、この時は仮釈放されました。しかし、2012年に再び収監され、2013年に禁固20年の判決が下されました。

2017年11月29日、上訴審判決で禁固20年が確定すると、プラリャクは「スロボダン・プラリャクは戦争犯罪人ではない。私は法廷の判決を認めない」と強く主張し、裁判官の制止を無視して小瓶に入った液体を飲み干しました。審理は直ちに中断され、救急車が呼ばれましたが、彼は搬送先の病院で死亡しました。オランダ検察庁は、彼の飲んだ小瓶から致死毒が検出されたと発表し、後の検死結果で青酸カリによる心不全が死因であると推定しました。

死後の波紋

プラリャクの死後、クロアチアとボスニアでは、クロアチア人が彼を称える追悼集会が開かれ、町の広場には花やろうそくが供えられました。彼の出身地であるチャプリナでは、彼は英雄として扱われ、中央広場では数百本のろうそくで「Praljak」の名前が描かれました。モスタルでも、彼の死を悼む人々が集まり、ろうそくに火を灯しました。また、クロアチアの首都ザグレブでは、プラリャクを称える式典が開催され、多くの人々が参加しました。

裁判の背景

プラリャクは、フラニョ・トゥジマン大統領と最終目的を共有していたとされ、1992年から1995年にかけてモスタル市で発生した戦争犯罪で有罪となりました。彼は当時モスタル市の包囲に関与しており、1993年夏にプロゾールで兵士らがムスリムを拘束していたこと、国際機関への襲撃、スタリ・モストやモスクの破壊などを知りながら、適切な対策を講じなかったとして「人道に対する罪」に問われました。

ICTYの判決と自殺に対する意見

クロアチアの大統領コリンダ・グラバル＝キタロヴィッチは、クロアチア人は同胞がボスニアで犯した罪を認めるべきだと述べつつも、クロアチア国民はプラリャクの死を深く悲しんでいると語りました。ICTYで判事を務めたヴォルフガング・ションブルクは、プラリャクの自殺を「悲劇」と表現し、過去にも同様の自殺未遂事件があったことを指摘しました。ボスニア・ヘルツェゴビナの大統領評議会のクロアチア人代表であるドラガン・チョービッチは、プラリャクは自殺によって自身が戦争犯罪人ではないことを証明しようとしたのだと述べました。また、クロアチアの首相アンドレイ・プレンコビッチは、ICTYの判決を批判し、プラリャクの担当弁護士は、彼の死は無実を確信していたからだろうと述べました。

スロボダン・プラリャクの生涯とその劇的な最期は、紛争の複雑さ、正義の難しさ、そして人間の尊厳について深く考えさせられる出来事として、歴史に刻まれています。

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