スローハンド (アルバム)

『スローハンド』（Slowhand）は、ブルース・ロックの巨星エリック・クラプトンが1977年に発表したスタジオ・アルバムであり、彼のキャリアにおける特に重要な作品群の一つとして広く認識されている。クラプトンの代名詞ともいえるニックネームをタイトルに冠したこのアルバムは、商業的にも大きな成功を収め、アメリカのビルボード誌アルバム・チャートでは最高位2位を記録した。

批評家からの評価も非常に高い。音楽評論家スティーヴン・トーマス・アールワインは、音楽データベースサイトallmusicにおいて、本作をクラプトンの別代表作である『461 オーシャン・ブールヴァード』と並ぶ傑作として称賛した。また、『ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500』でも325位にランクインするなど、音楽史におけるその価値が証明されている。

これまでの数作がアメリカやジャマイカのスタジオで制作されていたのに対し、本作はクラプトンにとって久々に母国イギリスでのレコーディングとなった。プロデューサーとして迎えられたのは、ローリング・ストーンズやザ・フーといったロック界の重鎮たちの作品を手掛けてきたグリン・ジョンズである。演奏面では、1974年からクラプトンを支えてきたレギュラー・バンドの面々に加え、元キング・クリムゾンのサックス奏者メル・コリンズが参加し、アルバムのサウンドに色彩と深みを与えている。

アルバムには後世に残る名曲が多数収録されている。特に「ワンダフル・トゥナイト」は、当時の妻であるパティ・ボイドに捧げられた、クラプトンのバラードの中でも屈指の人気を誇るラヴ・ソングである。ライブでの披露頻度も非常に高く、ファンの間では絶大な支持を得ている。日本においても、1992年放送のテレビドラマ『しあわせの決断』の主題歌として使用されたほか、金子飛鳥やベイビーフェイスなど、様々なジャンルのアーティストによってカヴァーされている。

もう一つの代表曲「レイ・ダウン・サリー」は、本作からの先行シングルとしてリリースされ、Billboard Hot 100で最高3位を記録するヒットとなった。この他にも、J.J.ケイル作の「コカイン」や、タイトル曲とも関連するインストゥルメンタル風の「ザ・コア」など、ブルース、ロック、カントリー、レゲエといった多様な要素が融合した楽曲群が収められている。

アルバムのジャケットデザインは、エリック・クラプトン自身が担当した。日本の写真家、浅沼ワタルが撮影した写真を加工して制作されており、その印象的なビジュアルも作品の一部として記憶されている。

本作のレコーディングに参加した主なミュージシャンは以下の通り：

エリック・クラプトン - ボーカル、ギター
ジョージ・テリー - ギター
ディック・シムズ - キーボード
カール・レイドル - ベース
ジェイミー・オルディカー - ドラム 、パーカッション
メル・コリンズ - サックス
マーシー・レヴィ - バッキング・ボーカル
イヴォンヌ・エリマン - バッキング・ボーカル

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