スヴェイグジル

スヴェイグジル：謎に包まれたユングリング家の王

スヴェイグジル（古ノルド語: Sveigðir）は、北欧神話に登場するスウェーデン王であり、ユングリング家の血を引く人物です。父はフィヨルニル、息子はヴァンランディ。彼の治世と最期は謎に包まれており、伝説的な逸話が語り継がれています。

伝承

スヴェイグジルに関する記述は、主に以下の文献に見られます。

ユングリング家のサガ: 13世紀のスノッリ・ストゥルルソンによって編纂された『ヘイムスクリングラ』の一部。
ユングリンガ・タル: 9世紀に成立したとされる詩。
ノルウェー史(Historia Norwegiæ):　ユングリンガ・タルの要約
アイスランド人の書: 12世紀初期の文献。

これらの文献によると、スヴェイグジルはフィヨルニルの後を継いで王となり、ヴァナヘイム出身のヴァナという女性と結婚したとされています。しかし、彼の治世で最も有名な出来事は、ドワーフに誘われて石の中に姿を消し、二度と戻らなかったというものです。

石の中へ消えた王

スヴェイグジルの失踪は、彼の人物像を語る上で欠かせない要素です。スノッリ・ストゥルルソンは『ユングリング家のサガ』の中で、スヴェイグジルがドワーフに誘い込まれて石の中に消えた様子を描写しています。この出来事は、スヴェイグジルの運命を決定づけ、彼の物語に神秘的な彩りを添えています。

なぜスヴェイグジルはドワーフに誘われたのか、石の中には何があったのか、その真相は謎に包まれています。一説には、ドワーフは地下世界に通じる扉の守り手であり、スヴェイグジルは禁断の領域に足を踏み入れてしまったとも考えられています。

その後

スヴェイグジルの失踪後、息子のヴァンランディが王位を継承しました。ヴァンランディもまた、不幸な運命を辿ることになりますが、彼の物語はスヴェイグジルの伝説と深く結びついています。

史実としてのスヴェイグジル

スヴェイグジルが実在の人物であったかどうかは定かではありません。しかし、彼の名前は『ユングリンガ・タル』や『アイスランド人の書』といった古い文献にも登場することから、何らかの歴史的な背景があった可能性も否定できません。

スヴェイグジルの物語は、北欧神話の奥深さと、古代スカンジナビアの歴史を垣間見ることができる貴重な手がかりとなります。彼の謎に包まれた生涯は、人々の想像力を刺激し、様々な解釈を生み出してきました。

まとめ

スヴェイグジルは、ユングリング家の王でありながら、その生涯は謎に包まれています。ドワーフに誘われて石の中に消えたという伝説は、彼の物語を神秘的に彩り、多くの人々に語り継がれています。スヴェイグジルの足跡を辿ることは、北欧神話の世界をより深く理解するための入り口となるでしょう。

参考文献

スノッリ・ストゥルルソン『ヘイムスクリングラ - 北欧王朝史 -（一）』谷口幸男訳、プレスポート・北欧文化通信社、2008年、ISBN 978-4-938409-02-9。
伊藤盡「アドルフ・ノレーン編フヴィンのショーゾールヴル作『ユングリンガ・タル、あるいはイングリング列王詩』（前編）」『杏林大学外国語学部紀要』第17号、2005年。

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