フィヨルニル

フィヨルニル：ユングリング家の王、その生涯と伝説

フィヨルニル（Fjölnir）は、紀元前1世紀から1世紀初頭にかけて、ガムラ・ウプサラに君臨したとされる、ユングリング家のスウェーデン王です。彼は、フレイとゲルズの息子として、半ば神話的な伝説に彩られた時代を生きたとされています。

神話の中のフィヨルニル

フィヨルニルは、フレイの子孫であるユングリング家の祖とされています。彼の名は、フレイの別名である「ユングヴィ」に由来し、ユングリング家は代々スウェーデン王として君臨しました。

『グロッティの歌』には、フィヨルニルがローマ皇帝アウグストゥスと同時代の人であったと記されています。彼の治世は豊作と平和に恵まれ、繁栄の時代であったと伝えられています。また、この歌には、彼がシェラン島の王フロージ（フリズレイヴの息子）を訪問した際、2人の女巨人フェニヤとメニヤを買い、後にフロージ王の破滅の原因となったというエピソードも語られています。

悲劇的な死

『ユングリング家のサガ』によれば、フィヨルニルはシェラン島の王「平和のフロージ」(Friðfróði)を訪問した際、蜂蜜酒の樽に落ちて溺死したとされています。この悲劇的な死後、彼の息子であるスヴェイグジルが王位を継承しました。

スノッリ・ストゥルルソンも『ユングリンガ・タル』において、フィヨルニルがフロージの住居で蜜酒によって命を落としたことを示唆する詩を引用しています。

また、『ノルウェー史』や『アイスランド人の書』といったより古い文献も、フィヨルニルがフレイの息子であり、スヴェイグジルの父であること、そして蜂蜜酒の樽の中で溺死したことを伝えています。

オーディンの別名としてのフィヨルニル

興味深いことに、「フィヨルニル」という名前は、オーディンの別名としても知られています。『古エッダ』の『グリームニルの言葉』や『レギンの歌』、『散文のエッダ』の『ギュルヴィたぶらかし』など、複数の文献でオーディンの名乗りとして登場します。このことから、「フィヨルニル」という名前が、神話的な存在や力と結びついた特別な意味を持っていた可能性が考えられます。

参考文献

伊藤盡「アドルフ・ノレーン編フヴィンのショーゾールヴル作『ユングリンガ・タル、あるいはイングリング列王詩』（前編）」『杏林大学外国語学部紀要』第17号、2005年。
スノッリ・ストゥルルソン『ヘイムスクリングラ - 北欧王朝史 -（一）』谷口幸男訳、プレスポート・北欧文化通信社、2008年、ISBN 978-4-938409-02-9。
谷口幸男「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」『広島大学文学部紀要』第43巻No.特輯号3、1983年。

関連項目

ユングリング家のサガ
スウェーデンの歴史
スウェーデン君主一覧
* スカンディナヴィアの歴史

フィヨルニルの生涯は、神話と歴史が交錯する古代北欧の世界を垣間見せてくれます。彼の物語は、ユングリング家の隆盛、そして古代スカンディナヴィアの信仰や文化を理解するための重要な手がかりとなるでしょう。

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