ズグロカモメ

ズグロカモメ (Saundersilarus saundersi) について

ズグロカモメは、チドリ目カモメ科ズグロカモメ属に分類される鳥類です。以前はカモメ属に分類されていましたが、分子系統解析の結果、独立した属として扱われるようになりました。

分布

ズグロカモメは、東アジアの沿岸地域に広く分布しています。繁殖地は、黄海や渤海沿岸などの限られた地域で、冬季になると大韓民国、中華人民共和国南東部、台湾、日本、ベトナムなどの地域で越冬します。日本では、主に九州に冬鳥として渡来しますが、本州西部や四国、沖縄県でも少数が越冬することが確認されています。

形態

ズグロカモメは、全長29～32cm、翼長27～28cm、翼開張87～91cm、体重200～215gと、中型のカモメです。頭部は丸みを帯びており、上面は淡青灰色、下面は白色をしています。静止時には、風切羽先端が白と黒の縞模様に見えます。嘴は太くて短く、黒色をしています。後肢は濃赤色です。

夏羽では、頭部が黒くなり、和名の由来となっています。目の周りは白く縁取られます。冬羽では、頭部が白くなり、目の後ろに黒い斑紋が入ります。

分類

以前はカモメ属Larusに分類されていましたが、2005年の分子系統解析の結果、ヒメクビワカモメを含まないグループとして、旧カモメ属が細分化されました。この結果に基づき、ズグロカモメは形態的な特徴から、1926年に記載されたSaundersilarus属に分類されることが提唱されました。Birdlife InternationalやClements Checklistでは、2018年、2019年時点でモノタイプ（1属1種）として扱われています。

一方、IOC World Bird Listでは、系統関係が不明確であるとして、2020年時点ではChroicocephalus属とする説を採用していましたが、後にSaundersilarus属に移動されました。

生態

ズグロカモメは、干潟などの水辺に生息しています。主に、トビハゼなどの魚類、ヤマトオサガニなどの甲殻類、ゴカイ類などの多毛類を捕食します。低空を飛翔し、獲物を発見すると急降下して捕食します。

繁殖様式は卵生で、5月頃に3個の卵を産みます。巣は、植生のまばらな塩性湿地に、植物の茎を組み合わせた皿状のものが作られます。雌雄ともに抱卵し、抱卵期間は約22日です。

人間との関係

ズグロカモメは、生息地では卵が食用とされることがあります。しかし、繁殖地である中国では、都市開発や農地開発、埋め立て、養殖池への転換などによる塩生湿地の破壊が深刻な問題となっています。また、外来種であるSpartina alternifloraの侵入によるSuaeda glaucaの植生の減少、水位の変化、油田開発、食用の採集なども、ズグロカモメの生息を脅かす要因となっています。

日本では、越冬地である干潟の開発により生息地が減少し、具体的な保護対策は十分に行われていません。かつて最大の越冬地であった諫早湾は、干拓により干潟が消失し、ズグロカモメの越冬地としては壊滅的な状況となっています。

曽根干潟では、1976年に初めてズグロカモメの越冬が確認されてから、少なくとも1993年までは越冬が確認されていました。1988年から1993年にかけては、越冬数が増加傾向にあり、1991年には最大188羽、1992年には最大213羽が確認されたという報告があります。曽根干潟での越冬数急増の要因としては、沖合での土砂処分場建設に伴う浚渫工事の影響、流入河川での宅地開発に伴う干潟の泥質化、他の越冬地の改変などが考えられています。

環境省のレッドリストでは、絶滅危惧II類（VU）に指定されており、保護が必要な種として認識されています。

関連情報

鳥類レッドリスト (環境省)
日本の野鳥一覧
* ギラン - Jリーグ・ギラヴァンツ北[[九州]]のマスコットキャラクター。曽根干潟に生息するズグロカモメをモチーフとしている。

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