ズミイヌイ島攻撃

ズミイヌイ島攻撃：黒海における激戦の記録

2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻の初日、黒海に浮かぶ小さな島、ズミイヌイ島（蛇島）は、激しい戦いの舞台となりました。この島を巡る攻防は、単なる領土の奪い合いに留まらず、ウクライナの抵抗の象徴として世界中に知られることとなります。

戦いの背景

ズミイヌイ島は、ウクライナ南西沖に位置する面積0.17平方キロメートルの小島です。ルーマニア沿岸から約45km、黒海のウクライナ領海の南限に位置し、戦略的に重要な場所でした。2007年には、島に唯一の入植地であるバイルが設立されました。2021年8月、ロシア軍がウクライナ周辺に集結する中、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの島で記者会見を行い、「この島も他の領土と同様、ウクライナの土地であり、全力で守る」と宣言しました。

ロシア軍の侵攻

2022年2月24日、ロシア軍はズミイヌイ島への攻撃を開始しました。ロシア海軍黒海艦隊の旗艦であるミサイル巡洋艦「モスクワ」と哨戒艦「ヴァシリー・ブイコフ」が島を艦砲射撃しました。攻撃に先立ち、「モスクワ」は島の守備兵に対し降伏を要求しましたが、これに対してウクライナ兵はロシア語で「ロシアの軍艦よ、くたばれ（Русский военный корабль, иди на хуй）」と応じました。この応答は音声クリップとして瞬く間に拡散され、抵抗の象徴として世界中に知られることとなりました。

その後、ロシア軍は島のインフラを破壊し、占領しました。当初、ウクライナ側は守備隊が全員死亡したと発表しましたが、後にロシア側から捕虜になったと発表され、事実関係が修正されました。

ウクライナ軍の反撃と島の解放

ロシア軍による占領後、ウクライナ軍はズミイヌイ島とその周辺海域に駐留するロシア軍艦や船舶に対して、航空爆弾、ミサイル、長距離砲などを用いた反撃を開始しました。特に、巡洋艦「モスクワ」はウクライナ軍の攻撃により沈没し、ロシア軍にとって大きな痛手となりました。

2022年6月30日、ロシア国防省は「善意の表明」としてズミイヌイ島からの撤退を発表しましたが、ウクライナ軍はロシア軍が砲撃に耐えかねて撤退したと主張しました。その後、同年7月7日、ウクライナ軍は島に再上陸し、再びウクライナの旗を掲げました。

その後の展開

ズミイヌイ島は、ロシアによる海上封鎖の拠点となっており、ウクライナからの穀物輸出の障害となっていました。島の解放は、ドナウ川河口からの穀物輸出航路の利用を可能にし、世界的な食糧危機を緩和する上で重要な役割を果たしました。

「ロシアの軍艦よ、くたばれ！」

ズミイヌイ島の守備兵が発した「ロシアの軍艦よ、くたばれ！」という言葉は、ウクライナの抵抗を象徴するスローガンとして世界中に広まりました。このフレーズは、ウクライナの士気を高め、国際的な支持を集める上で大きな役割を果たしました。ウクライナ政府は、この言葉をモチーフにした郵便切手を発行し、戦いの象徴として広く知られるようになりました。

戦いの教訓と影響

ズミイヌイ島を巡る戦いは、2022年ロシアのウクライナ侵攻における重要な出来事の一つです。この戦いは、小規模な島での激しい攻防だけでなく、情報戦やプロパガンダ戦の重要性を示しました。また、ウクライナ国民の抵抗の精神を世界に示すとともに、国際社会の連帯を促しました。この戦いの経験は、今後の紛争における戦略や戦術を考える上で、重要な教訓となるでしょう。

この戦いの後、2023年7月8日には、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が島を訪問し、記念碑に献花するなど、ウクライナにとって重要な場所となっています。

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