ズルワーン

ズルワーン（Zurvān）は、後期ゾロアスター教の一派であるズルワーン教において、創造神として崇拝される存在です。その名前は「時間」を意味し、この神格が時間という概念と深く結びついていることを示唆しています。

ズルワーンの神話

中世ゾロアスター教の文献に記された神話によれば、世界の始まりにはズルワーンのみが存在していました。彼は長い時をかけて、全善なる存在を生み出し、世界を治めさせようとしました。しかし、その過程で、その試みが本当に可能なのかという疑念を抱いてしまいます。この心の迷いが、ズルワーンの子を善と悪の二つの存在に分裂させてしまったとされています。

その結果、全善の神であるオフルマズド（アフラ・マズダー）と、全悪の神であるアフリマン（アンラ・マンユ）が誕生しました。この双子の神々によって世界は創造され、善と悪が絶えず戦い続ける場となったと伝えられています。

ズルワーン信仰の歴史

ズルワーン信仰は、アケメネス朝時代にまで遡ると考えられていますが、サーサーン朝時代に一派をなすほどの勢力を持つようになりました。さらに、この信仰はギリシャやローマにも伝わり、アイオン（Αιών、永劫を意味する）という名前で知られるようになりました。

ゾロアスター教におけるズルワーンの位置づけ

本来のゾロアスター教では、アフラ・マズダーが善悪の対立を超えた絶対神としての地位を占めていました。また、善の創造神であるスプンタ・マンユと、悪の創造神であるアンラ・マンユの戦いを裁き、正義の勝利を保証する役割を担っていました。

しかし、後の神学においてスプンタ・マンユがアフラ・マズダーと同一視されるようになり、本来の神学におけるアフラ・マズダーのような絶対神が別途必要とされるようになりました。その結果、ズルワーンが創造神として位置づけられるようになったと考えられています。

ズルワーンは、ゾロアスター教の神学的な変遷を象徴する神格であり、その存在は、宗教における信仰の多様性と、神概念の変化を理解する上で重要な要素となっています。彼の物語は、善と悪の根源、そして時間の流れといった深遠なテーマを私たちに問いかけます。

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