ズート・スーツ/アイム・ザ・フェイス

ザ・フー、幻のデビューシングル「ズート・スーツ」と「アイム・ザ・フェイス」

1964年、ザ・フーは初代マネージャー、ピーター・ミーデンの主導のもと、モッズ・バンドとして売り出す戦略を採用しました。その一環として、バンド名をザ・ハイ・ナンバーズと改名し、デビューシングル「ズート・スーツ」/「アイム・ザ・フェイス」をフォンタナ・レコードからリリースしました。

制作の背景

ミーデンは、メンバーにモッズの衣装を着せ、バンドのイメージを一新。初の本格的なレコーディング・セッションでは、ジャック・ベイヴァーストックとクリス・パーメンターをプロデューサーに迎え、「ズート・スーツ」「アイム・ザ・フェイス」「ヒア・ティス」の3曲を録音しました。

しかし、「ズート・スーツ」はダイナミックスの「ショウメン」、「アイム・ザ・フェイス」はスリム・ハーポの「ゴット・ラヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」の歌詞を書き換えたもので、ミーデンが作者としてクレジットされています。また、「アイム・ザ・フェイス」のピアノは、ミーデンの友人であるアラン・エレットが担当しました。

リリースと評価

デビューシングルとして採用されたのは「ズート・スーツ」と「アイム・ザ・フェイス」でしたが、1000枚しかプレスされず、売り上げはわずか500枚にとどまりました。この結果を受け、フォンタナ・レコードはバンドとの契約更新を見送りました。

その後、ハイ・ナンバーズはキット・ランバートとクリス・スタンプと契約し、ミーデンと袂を分かち、バンド名をザ・フーに戻して再出発を果たしました。

幻のシングルから再評価へ

長らく再プレスされることのなかった本シングルですが、1971年にピート・タウンゼントが再発を計画。1980年にはA/B面を逆にして再発され、イギリスで49位を記録しました。

収録アルバム

オッズ&ソッズ (1974年): 「アイム・ザ・フェイス」 (ステレオ・ミックス) を収録。2020年リリースの2枚組LP盤では「ズート・スーツ」と「ヒア・ティス」も追加収録。
さらば青春の光 (オリジナル・サウンドトラック) (1979年): 「ズート・スーツ」を収録。2000年リリースのリイシューCDには「アイム・ザ・フェイス」も収録 (ショート・ステレオ・ミックス)。
Thirty Years of Maximum R&B (1994年): 2曲とも収録。「ヒア・ティス」 (ショート・ステレオ・ミックス) も収録。
The Who Hits 50! (2014年): 「ズート・スーツ」を収録。
* Maximum A's & B's (2017年): 2曲とも収録。

ザ・フーの初期を語る上で欠かせない「ズート・スーツ」/「アイム・ザ・フェイス」。その背景を知ることで、彼らの音楽をより深く理解できるでしょう。

参考文献：アンディ・ニール; マット・ケント (2008). エニウェイ・エニハウ・エニウェア. 佐藤幸恵、白井裕美子（訳）. シンコーミュージック. ISBN 978-4-401-63255-8
外部リンク: Zoot Suit - The Who

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