セオドア・ツォー

セオドア・Y・ツォー（Theodore Y. "Ted" Ts'o、1968年生まれ）は、ソフトウェア開発者として、特にLinuxカーネル開発において初期から重要な貢献をしてきた人物です。彼はファイルシステム周辺の改善で広く知られており、その功績はLinuxの発展に大きく貢献しています。

ツォーは、1990年にマサチューセッツ工科大学（MIT）で計算機科学の学位を取得しました。卒業後、MITの情報システム部門に1999年まで勤務し、この間、Kerberosバージョン5の開発チームリーダーを務めるなど、数々の業績を残しました。その後、VA Linux Systemsでの勤務を経て、2001年からはIBMに所属し、Linuxカーネルのパフォーマンスとスケーラビリティ向上に取り組みました。2007年にはLinux Foundation（LF）に移籍し、最高プラットフォーム戦略担当者、後に最高技術責任者（CTO）を歴任しました。

2010年からはGoogleに雇用され、カーネル、ファイルシステム、ストレージ関連の業務に従事しています。

ツォーの最も重要な功績の一つは、ext2、ext3、そして現在のext4ファイルシステムの開発と保守です。彼は、これらのファイルシステムの初期化などの管理に使用されるユーザー空間ユーティリティ「e2fsprogs」の開発者であり、ext4ファイルシステムのメンテナとしても活動しています。

また、ツォーはUSENIXの会計やLinux Kernel Developers Summitの議長も務めました。Debian開発者としても活動しており、主にファイルシステム関連のパッケージを管理しています。

セキュリティ分野では、IETFのセキュリティ分野理事会メンバー、IPsecワーキンググループの議長の一人として活躍しました。さらに、Free Standards Groupの創設メンバーであり、現在は議長を務めています。

1994年には、/dev/randomに関連するカーネルドライバを開発しました。これは、Linuxにおいてユーザー空間プログラムに高品質な暗号論的乱数を提供する初のカーネルインターフェースとなりました。この成果は、/dev/randomと/dev/urandomがUnix系OSにおける乱数生成の標準的なインターフェースとなる上で重要な役割を果たしました。現在では、PGP、GPG、GUID、IPsec、ファイルシステムレベルの暗号化など、多くのプログラムや機構が/dev/randomを利用しています。

これらの功績が認められ、ツォーは2006年にフリーソフトウェア財団からAward for the Advancement of Free Softwareを授与されました。

ツォーは、自身の出自について、両親が香港からアメリカに移住し、父親がスタンフォード大学で精神薬理学の博士号を取得したと述べています。彼の名前を中国語で表記すると、「曹子徳」（Cáo Zǐdé）となります。

ツォーの活動は、ファイルシステムだけでなく、Linuxカーネル全体の発展、セキュリティ、標準化など多岐に渡っており、彼の貢献は現代のコンピューティングに不可欠な基盤となっています。

外部リンク
彼のホームページ
彼のLiveJournalブログ
Linux Developer Network Blogs
彼のTwitterアカウント
Design and Implementation of the Second Extended Filesystem - 1994年12月に発表された論文
Planned Extensions to the Linux Ext2/Ext3 Filesystem - 2002年6月に発表された論文
* Video: Ted Ts'o on Ext4, BtrFS and first steps with Linux - ext4とbtrfsについて語るツォー。

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