セクト主義

セクト主義とは：左翼運動における党派性の排除傾向

セクト主義とは、主に左翼運動において、党派間で他の党派を排除しようとする傾向として定義されます。これは、本来、全人民への奉仕を理念とする共産党にとって、一部分への偏向を意味し、理念に反するものとして批判の対象となります。

歴史的背景と事例

左翼党派の歴史においては、セクト主義とみなされる集団との抗争が頻繁に見られました。中国共産党は1942年の整風運動を通じてセクト主義の克服を試みましたが、日本の革命的共産主義者同盟全国委員会（中核派）のように、セクト主義へと変質していった事例も存在します。

中核派は、時には様々な市民運動に参加するなど、セクト主義的ではない行動も見られます。しかし、セクト主義は往々にして支配勢力や右派勢力を利し、大衆が運動から離れていく原因となるという指摘もあります。日本の学生運動高揚期における熾烈な内ゲバは、運動の衰退を招いた一因とされています。

現代日本におけるセクト主義

現代の日本においては、日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派（革マル派）がセクト主義の傾向を持っていると指摘されています。彼らは、中核派や解放派などを「権力の走狗」として否定する論陣を機関紙上で展開しています。

また、日本共産党も新左翼党派を「トロツキスト」と批判し、警察の手先として否定する傾向があります。国会内でも他の野党との共闘を避け、一部からは「セクト主義的」「独善的」と批判されることがあります。しかし、2015年の平和安全法制成立以降は、政治的信条の違いを超えて法案廃止を目指す「国民連合政府」構想を打ち出し、選挙協力を模索するなど、変化も見られます。

世界的な潮流と克服の試み

世界的に見ると、21世紀の左翼陣営は勢力縮小により仲間割れをする余裕がなくなり、セクト間の主張に大差がなくなってきているため、共同でのデモや、イデオロギーの違いを乗り越えた左翼統一組織が実現するケースも見られます。しかし、その実態は呉越同舟とも言えます。日本においても、日本共産党の「国民連合政府」構想や、「SEALDs」や「総がかり行動」など、党派の枠を超えた運動が見られるようになり、かつてのような党派性を押し出した運動・戦術では成功が難しい時代となっています。

セクト主義克服への提言と警鐘

元新左翼活動家で政治評論家の村岡到は、日本にはびこるセクト主義を乗り越え、日本共産党と共闘すべきであると主張しています。ただし、これは日本共産党側の譲歩が前提であり、共産党側は新左翼との共闘に公式には関心を示していません。しかし、2014年の東京都知事選挙では、日本共産党と、かつて対立した旧第四インター日本支部（現：JRCL）などが宇都宮健児の支持団体として連携する現状も見られます。

音楽家の坂本龍一は、脱原発運動のセクト化に関連して、セクト主義に警鐘を鳴らしています。強圧的な政権に対抗するためには、小さなセクト主義を乗り越える必要があり、報道にも覚悟が求められると述べています。

セクト主義は、左翼運動の停滞を招く要因の一つであり、その克服は重要な課題です。党派間の対立を乗り越え、共通の目標に向かって協力することで、より大きな成果を生み出すことができるはずです。

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