セックス博物館

セックス博物館(性博物館、セックスミュージアム)



セックス博物館とは、性に関連する芸術作品、歴史的な性具、性に関する資料や物品などを収集・展示する文化施設です。これらの施設では、人間の性の歴史や文化、多様な表現方法を垣間見ることができます。

歴史的背景と呼称



このような性に関する資料を扱う博物館は、1960年代末から1970年代にかけてのいわゆる「性革命」の時代に、特にヨーロッパを中心に広く普及しました。当初は「セックスミュージアム」と呼ばれることが多かったのですが、1990年代以降はより学術的あるいは芸術的なニュアンスを強調し、露骨な表現を避けるため、「エロティックミュージアム」や「エロティックアート・ミュージアム」といった名称が用いられる傾向にあります。

世界の主なセックス博物館



世界各地には、様々な形態のセックス博物館が存在します。

アジア



アジアでは、中国、インド韓国、日本などに施設が見られます。

中国: 1999年に上海で中国初の性博物館が開館し、その後移転を重ね、現在は「中国性博物館」として同里に位置しています。設立者である性科学者リウ・タリン博士の名を冠して「タリン文化展」とも称され、古代中国の性文化に関する3000点以上の芸術品が展示されています。
インド: 2002年にはムンバイインド初のセックス博物館がオープンしました。
韓国: 2003年にソウルに開館した「アジア・エロス・ミュージアム」は閉館しましたが、2006年には個人収集家が済州島西帰浦市に「セックスと健康博物館」を開設しました。また、済州島には2004年オープンの「済州ラブ・ランド」という性教育も兼ねた屋外彫刻公園があり、140点の性的体位を表現した彫刻や性教育映画などが展示されています。
日本: 日本には「秘宝館」と呼ばれる性風俗博物館が各地に存在しました。これらは観光地や温泉地のアミューズメント施設内に設けられることが多く、個人運営が一般的でした。その歴史は1960年代から70年代に遡りますが、近年は施設の老朽化や客層の変化などにより減少し、多くの施設が閉館しています。

オセアニア



オーストラリア: 2001年にキャンベラに小さな「National Museum of Erotica」が開設されましたが、短期間で閉館しました。

ヨーロッパ



ヨーロッパは、性博物館の歴史が比較的長い地域です。

オランダ: 1985年に開館したアムステルダム性博物館は、世界的に知られています。
フランス: パリにあったエロティズム美術館は1997年に開館しましたが、2016年に閉館しました。
ドイツ: ハンブルクのレーパーバーン近くに1992年開設のエロティック美術館があり、ベルリンのベアテ・ウーゼ・エロティック美術館は1996年に開館しましたが、2014年に閉館しました。後者はかつて「世界最大」を謳っていました。
デンマーク: コペンハーゲンエロティカ博物館は1993年に開館しましたが、財政難により2009年に閉館しました。
スペイン: バルセロナエロティカ美術館は1996年に開館しています。
ロシア: 2004年にサンクトペテルブルクにロシア初のセックス博物館が開館し、伝説的な人物であるラスプーチンのペニスが保存展示されているとされています。また、モスクワには2011年に「トーチカG」という名称のセックス博物館がオープンしました。
イタリア: ナポリの国立考古学博物館には、ポンペイなどから出土したギリシャ・ローマ時代の膨大なエロティックアートコレクションがあり、2000年から一般公開されています。また、ヴェネツィアには2006年にヴェネツィアのエロティックな歴史や芸術を紹介するエロティック美術館が開館しました。
イギリス: ロンドン大英博物館には、エロティックな品々を収めた「セクレタム(食器棚55)」と呼ばれる非公開のコレクションがあります。
チェコ: プラハにあるセックスマシーン博物館は、性行為中の快楽や特殊な体位を可能にする機械的な器具に焦点を当てたユニークな博物館です。200点以上のオブジェや機械器具、関連アート、映画などが展示されています。
リトアニア: 2009年にカウナスリトアニア初のエロティック博物館が開館しました。
ギリシャ: アテネには2012年に「Kama Sutra: the World Museum of Erotic Art」が開館しました。
ポーランド: 2011年にワルシャワに開館したポーランド初のエロティック美術館は、2000点以上の世界中のエロティックアート作品を展示していましたが、移転費用などが課題となり2012年初めに閉館しました。
ハンガリー: ブダペストには2019年に「Erotic&Sex Museum」がオープンし、セックスアートやBDSM用具などが展示されています。
ウクライナ: ハルキウには1999年に性文化博物館が開館しています。

北米



アメリカ合衆国: アメリカでは複数の都市に性やエロティシズムをテーマにした施設があります。シカゴのレザー・アーカイヴ&博物館は、レザーやBDSM文化の歴史を扱うコミュニティ施設として1991年に設立されました。ニューヨーク市のミュージアム・オブ・セックスは2002年に開館し、ラスベガスのエロティック遺産博物館は2008年に「世界最大」を謳って開館しました。マイアミビーチにも2005年に世界エロティック美術館がオープンしています。一方、ハリウッド・エロティック・ミュージアム(2004年開館)や、ネバダ州にあった「Julia C. Bulette Cafe, Saloon, and Red Light Museum」(2020年閉館)のように、既に閉館した施設も存在します。

南米



* ブラジル: 2016年には、ミナスジェライス州ベロオリゾンテに「Museu do Sexo Hilda Furacão」が開館しています。

これらの施設は、それぞれの文化や歴史の中で育まれた性の捉え方や表現を後世に伝える役割を担っています。しかし、運営上の課題や社会的な受容度の変化などにより、閉館を余儀なくされるケースも少なくありません。

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