セントルイス・カー・カンパニー

セントルイス・カー・カンパニー：アメリカ鉄道車両史に名を刻んだ老舗メーカー

セントルイス・カー・カンパニーは、1887年から1974年までアメリカ合衆国ミズーリ州セントルイスに拠点を置いていた、鉄道車両製造における一大企業でした。路面電車や地下鉄車両といった市電車両から、ディーゼル機関車、さらにはトロリーバスまで幅広い製品を手がけ、アメリカ鉄道の歴史に大きな足跡を残しました。 創業から約90年の歴史の中で、数多くの革新的で象徴的な車両を生み出し、その技術力は高く評価されていました。

多様な事業と技術革新

同社は1887年4月、鉄道車両の製造・販売を目的として設立されました。創業当初は路面電車を中心に製造していましたが、事業は多角化し、乗用車の製造にも着手しました。第一次世界大戦と第二次世界大戦中には、航空機製造にも参入し、グライダー、練習機、上陸用車両（LVT）、飛行艇、さらには飛行船の製造も請け負うなど、その活躍は鉄道車両製造のみにとどまりませんでした。

特に注目すべきは、PCCカーとバーニーカーです。これらの車両は当時、革新的なデザインと高い機能性で大きな人気を博しました。そのデザインは現在でも高く評価されており、後世の車両デザインにも影響を与えたと言われています。

主要都市への車両供給と象徴的なプロジェクト

セントルイス・カー・カンパニーは、ニューヨークやシカゴといった大都市の交通網に車両を供給するなど、アメリカ各地の鉄道事業に貢献しました。1939年には、サザン鉄道向けに流線形のディーゼル列車「FM OP800」を製造するなど、技術力の高さを改めて示しました。

1960年にはゼネラル・スチール・インダストリーズ傘下となり、その後もニューヨーク市地下鉄向けの車両製造を継続。1964年には、R36WF電車430両とニューヨーク・ニュージャージー港湾公社向けのPA1電車の製造を完了するなど、大規模な受注にも対応できる生産能力を誇っていました。

また、セントルイスの象徴であるゲートウェイ・アーチへのアクセスを向上させるため、アーチの頂上まで来場者を輸送するトラムの製造も手がけています。このトラムは、地元セントルイスのランドマークであるゲートウェイ・アーチにふさわしい、美しく機能的な車両でした。

最後の車両とその後

1968年まで営業を続けましたが、1974年に操業を停止しました。最後の製品となったのは、ニューヨーク市地下鉄およびスタテンアイランド鉄道向けのR44電車と、アメリカ合衆国運輸省（USDOT）の試験車両「State of the Art Car」でした。

同社の工場跡地は、2005年から再開発され、「セントルイス・ビジネスセンター」という商工業複合施設となっています。セントルイス・カー・カンパニーは既に過去のものとなりましたが、同社が製造した車両は、各地の鉄道博物館で静態保存や動態保存されており、その歴史と技術力を偲ぶことができます。

セントルイス・カー・カンパニーの主要製品

同社は多様な車両を製造しており、その中には現在も一部で運行されている車両も多く含まれます。主な製品を挙げると、PCCカー（1935年-1952年）、ピーター・ウィット・カー、トロリーバス、インターアーバン電車、電気式ディーゼルカー、ニューヨーク市地下鉄各形式の車両、サンフランシスコ市営鉄道向けの車両など、多岐にわたります。 特にサンフランシスコ市営鉄道Fラインでは、多数のPCCカーをはじめとした同社製のレトロ車両が現在も営業運転で使用されており、一般の人々が気軽に同社の車両に乗車体験できる機会が提供されています。これらの車両は、セントルイス・カー・カンパニーの技術力とデザイン性を現在に伝える貴重な存在となっています。

終わりに

セントルイス・カー・カンパニーは、その歴史の中でアメリカ鉄道車両の発展に大きく貢献しました。製造した車両は、各地で人々の生活を支え、アメリカの都市景観を形作ってきたのです。現在ではその姿を直接見ることができる機会は減りましたが、残された車両や記録を通じて、その功績を後世に伝えることが重要です。

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