LVT

LVT (Landing Vehicle Tracked)

LVT（Landing Vehicle Tracked）は、第二次世界大戦中にアメリカ海軍と海兵隊が運用した水陸両用トラクターです。アンプトラック（AMPHTRACK）、アムトラック（AMTRAK）、アムトラク（AMTRAC）などの略称があります。日本語では水陸両用装軌車と訳されます。

開発の経緯

LVTの起源は、1935年にドナルド・ローブリングが開発した「アリゲーター」と呼ばれる湿地帯用車両に遡ります。湿地での活動を目的としたこの車両は、改良を重ねるごとに水上での性能を高め、車両と船舶の融合を目指しました。

アメリカ海兵隊は、水陸両用作戦の可能性に着目し、ローブリングに軍事利用を目的とした水上行動に適した車両の開発を依頼しました。海軍の要求に応えるべく、多くの改修が加えられた結果、LVTが誕生しました。初期のLVTは、FMCコーポレーションによって200台が発注され、同社の主要取引先はアメリカ軍へと移行しました。現在、FMCのその部門はBAEシステムズのBAE システムズ・ランド・アンド・アーマメントとなっています。

LVTは、スクリューのような水上専用の推進機構を持たず、無限軌道の踏面に設けられた水かき板を利用して水上を航行しました。この水かき板の形状は、改良を重ねるごとに性能が向上しました。

初期のLVTは、24名の乗員と2,000kgの貨物を輸送可能でしたが、装甲などの防御力は不足していました。しかし、海兵隊はその攻撃力に着目し、装甲と火力を強化したLVT(A)-1やLVT(A)-4などの派生型を開発しました。これらの水陸両用戦車はアムタンク（AMTANKS）と呼ばれ、スチュアート戦車のエンジンや改良されたサスペンションを搭載することで、陸上での機動性も向上しました。

第二次世界大戦終結までに、18,621台のLVTが製造されました。戦後も試作車の開発は続けられましたが、資金不足のため量産には至りませんでした。海兵隊は既存のLVT-3とLVT(A)-5を近代化改修し、1950年代後半まで運用しました。

戦歴

LVTは、ガダルカナル戦での後方支援を経て、タラワ攻撃で初めて上陸作戦に投入されました。タラワでは、珊瑚礁や浅瀬を乗り越えて輸送を成功させ、その価値を証明しました。上陸用舟艇が座礁するような地形でも行動可能だったため、上陸作戦におけるLVTの有用性は非常に高いものでした。しかし、日本軍の砲火により多数のLVTが損傷し、防御力の低さが露呈しました。

タラワの経験から、LVTには標準化された増加装甲が施されるようになりました。また、火力支援を目的としたアムタンクが開発され、マリアナ諸島攻略戦などでも活躍しました。レイテ島上陸作戦では、9個のアムトラック部隊と2個のアムタンク部隊が投入されました。沖縄戦では、1,000台以上のLVTが投入されるなど、太平洋戦域を中心に数々の作戦に参加しました。

終戦間際にはヨーロッパ戦線にも投入され、イギリス軍によって「バッファロー」と名付けられたLVTがスヘルデの戦いやプランダー作戦などで使用されました。戦後も、LVT-3Cや改良型LVT(A)-5が朝鮮戦争で使用されたほか、フランス軍がLVT-4やLVT(A)-4をベトナム戦争や第二次中東戦争で使用しました。

各バリエーション

LVT-1 (1941年): 最初の量産型。装甲は無く、7.62mm機関銃2挺を搭載。
LVT-2 "ウォーター・バッファロー" (1942年): エンジンとサスペンションを強化し、不整地での走破性を向上。
LVT(A)-1 (1942年): LVT-2をベースに、37mm砲と装甲を追加。
LVT(A)-2 "ウォーター・バッファロー" (1943年): LVT-2を装甲化。
LVT-4 "ウォーター・バッファロー" (1943年): エンジンを前部に移し、後部に大型ランプドアを設置。LVTシリーズ最多生産数。
LVT(A)-3: LVT-4を装甲化したタイプだが、生産されず。
LVT-4(F) "シー・サーペント": イギリス陸軍向けに開発された火炎放射器搭載型。
LVT-3 "ブッシュマスター" (1944年): LVT-4と同様のレイアウトを持つ。
LVT(A)-4 (1944年): 75mm榴弾砲を搭載した火力支援型。
LVT(A)-5 (1945年): LVT(A)-4の砲塔を動力化し、主砲にジャイロ安定装置を追加。
LVT-3C (1949年): LVT-3の改良型で、底面を装甲化し、浮揚性を改善。

運用国

アメリカ合衆国
イギリス
フランス
オーストラリア
オランダ
ニュージーランド
フィリピン
中華民国
ベトナム共和国

後継車両

LVTは、アメリカ軍における上陸作戦用水陸両用車両として高く評価され、その後もLVTP-5、LVTP-7（AAV7）などの後継車両が開発・運用されました。これらの車両は、BAE システムズ・ランド・アンド・アーマメントによって生産されています。

登場作品

映画『地獄の戦場』: アメリカ海兵隊のLVT-3が登場。
ドラマ『ザ・パシフィック』: LVTが登場。
ゲーム『バトルフィールドV』: LVT(A)-1がアメリカ軍の水陸両用戦車として登場。
ゲーム『War Thunder』: LVT(A)(1), LVT(A)(4), LVT(A)(4) (ZiS-2)が登場。

参考文献

Steven Zaloga, Terry Hadler, Michael Badrocke - Amtracs: US Amphibious Assault Vehicles, 1999, Osprey Publishing (New Vanguard 30), ISBN 1-85532-850-X.
スティーヴン・ザロガ、テリー・ハドラー、マイク・バドロック著、武田秀夫訳「アムトラック - 米軍水陸両用強襲車両」2002年、大日本絵画 ISBN 978-4-499-22781-0
* Steven Zaloga - Armour of the Pacific War, 1983, Osprey Publishing (Vanguard 35), ISBN 0-85045-523-5.

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