ゼネラルモーターズ大規模リコール (2014年)

ゼネラルモーターズ大規模リコール

2014年2月以降、米自動車大手ゼネラルモーターズ（GM）が製造した車両における大規模なリコール問題が明るみに出た。これは単に技術的な欠陥による部品交換に留まらず、企業側の対応の遅れや責任の所在が厳しく問われた一連の事象である。特に深刻視されたのは、企業側が欠陥の存在を知りながら長期にわたり適切な対応を怠り、結果として死亡事故を含む多数の事故を引き起こしたとされる点であり、「リコール隠し」の強い疑念が持たれた。

問題の発端は、同年2月13日の発表に遡る。GMはこの日、シボレー・コバルト（2005～2007年モデル）など合計77万8562台のリコールを発表した。リコールの対象となったのは、デルファイ社製のイグニッションスイッチの欠陥である。重いキーホルダーなどが原因でスイッチが不用意に動き、走行中にエンジンが停止し、エアバッグが作動しなくなる危険性があることが判明した。この時点で、すでに6件の死亡事故が発生していたことも公表された。

しかし、これで問題が収束することはなく、リコールの対象車種と台数、そして欠陥に起因する事故件数は短期間のうちに次々と追加されていった。イグニッションスイッチ関連だけでも対象台数は最終的に650万台に達し、事故による死亡者数も13人に増加した。さらに、ビュイック・アンクレイブやシボレー・トラバース、シボレー・マリブといった他の車種においても、シートベルトやトランスミッションなどの異なる部品に関するリコールが相次いで追加された。その結果、同年5月20日までにリコール総台数は1500万台を超える規模に膨れ上がった。

こうした状況を受け、アメリカ政府および議会はGMに対する厳しい追及を開始した。

同年3月4日、アメリカ道路交通安全局（NHTSA）は、GMが欠陥を認識しながら長期間放置していた疑いがあるとして、107項目にわたる詳細な質問状を送付し、4月3日までの回答を求めた。GMはこの期限内に回答を提出できなかったため、NHTSAは1日当たり7000ドルの制裁金を科す措置を取った。

3月10日には、アメリカ議会下院のエネルギー・商業委員会がGMの調査に着手した。この委員会は、2010年にトヨタ自動車の大規模リコール問題（トヨタ自動車の大規模リコール (2009年-2010年)）を扱った経緯があり、その調査手法や姿勢から注目を集めた。議会は、GMが欠陥を知りながら10年以上にわたり放置していたのではないかという点を厳しく追及した。

興味深いのは、この問題のさなかの3月19日に、アメリカ司法省とトヨタ自動車が2010年のリコール問題に関する和解案に合意したことである。トヨタ側が合衆国政府に対して12億ドルの和解金を支払うという内容であり、当時の法務長官は「和解案が将来の模範になれば」との見解を示した。これは、経営破綻を経て再建途上にあったGMであっても、軽微な処分で済まされる可能性は低いことを示唆する出来事となった。

4月1日、エネルギー・商業委員会の公聴会に、就任したばかりのGMのCEOであるメアリー・バーラが出席した。彼女は、2001年の段階でイグニッションスイッチの不具合を把握していたにもかかわらず、適切な対応が行われなかったことを認め、謝罪の意を表明した。ただし、リコール隠しの意図があったかどうかについては、当時の調査中であるとして明確な回答を避けた。

また、NHTSAは2010年からサターン・アイオンのパワーステアリングの不具合について調査を進めていたが、4月21日にこの調査を打ち切った。これは、イグニッションスイッチのリコール対象となった約33万台のアイオンに対し、パワーステアリング部分のリコールも追加されたことによる。パワーステアリングの不具合は12件の衝突事故を引き起こし、うち2件で負傷者が出ていたとされる。

一連の問題は最終的に司法との和解へと至った。2015年9月17日、GMは司法省との間で、点火スイッチのリコール問題に関する制裁金として9億ドル（当時のレートで約1090億円）を支払うことで合意したと発表した。さらに、この問題を巡る集団訴訟に対しても、5億7500万ドルを支払うことで和解が成立した。

この大規模リコール問題は、自動車メーカーにおける品質管理の甘さ、そして何よりも企業が消費者の安全よりもコストや平穏を優先させた場合の深刻な結末を浮き彫りにした。米当局が示した厳格な姿勢は、今後の自動車業界におけるリコール対応に大きな影響を与えることとなった。

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