ゼロ幅非接合子

ゼロ幅非接合子（ZWNJ）とは

ゼロ幅非接合子（Zero Width Non-Joiner, ZWNJ）は、コンピューター上で文字を扱う際に用いられる特殊な制御文字です。特に、合字（複数の文字が組み合わさって一つの文字のように表示されるもの）を使用する言語において、文字の連結を制御するために不可欠な役割を果たします。

ZWNJの役割

本来であれば合字として結合されるべき二つの文字の間にZWNJを挿入すると、これらの文字はそれぞれ独立した形で表示されます。具体的には、文字が単語の末尾に位置する場合に用いられる「末尾形」と、単語の先頭に位置する場合に用いられる「頭字形」が適用されます。

通常、文字の間にスペースを挿入することでも同様の効果が得られますが、ZWNJはスペースよりも文字間隔を狭く保ちたい場合や、単語と形態素を連結させたい場合に有効です。

Unicodeでの表現

ZWNJはUnicodeにおいて`U+200C`として符号化されており、HTMLでは`‌`または`‌`と表記されます。

様々な言語でのZWNJの利用

ZWNJは、特定の言語において、正確なタイポグラフィを実現するために重要な役割を果たします。

ヘブライ語

例えば、聖書ヘブライ語では、ニクダーと呼ばれる母音記号の一つであるホラムの点が、特定の文字の左側に表示される必要があります。もしこの点が文字の上に表示されてしまうと、別の単語と誤認される可能性があります。現代ヘブライ語では、合字の必要性が少ないため、ZWNJの使用頻度は低いですが、過去のテキストを正確に表示する上で重要な役割を果たします。

ドイツ語と英語

ドイツ語の組版では、複合語の構成要素の境界をまたいで合字を形成してはなりません。例えば、接頭辞の「Auf-」は、後続する単語から分離する必要があります。英語でも、同様に、形態素の境界を越えて合字を作ってはならない場合があります。例えば、「fly」や「fish」は、単語の中では形態素として認識されますが、複合語の中では別の形態素と組み合わさる場合に、合字を避ける必要が生じます。

ペルシア語

ペルシア語では、ZWNJは接頭辞、接尾辞、複合語を扱う際に広範囲に使用されます。ZWNJを使用することで、複合語を構成する要素が、スペースで区切られた複数の単語として誤解されるのを防ぎます。

文字の別形を表示するためのZWNJ

ブラーフミー系の文字（インド系の文字）では、文字の組み合わせによって異なる形になるのを防ぐためにZWNJが使用されます。

デーヴァナーガリー

デーヴァナーガリー文字では、通常、ク（क्）と ष（ष）が組み合わさると क्ष になります。しかし、ZWNJを間に挿入することで、क्‌ष のように、別々の文字として表示することができます。

カンナダ文字

カンナダ文字でも同様に、通常は結合して ನ್ನ になる文字の間にZWNJを挿入することで、ನ್‌ನ のように表示できます。この技術は、特に外来語をカンナダ文字で表記する際に役立ちます。例えば、「Facebook」をカンナダ文字で表記する際に、ZWNJを使用してより正確に音を表現します。

ZWNJのシンボル

ZWNJを表すシンボルは、キーボードのレイアウト標準であるISO/IEC 9995-7:2009およびIEC 60417によって標準化されています。

まとめ

ゼロ幅非接合子（ZWNJ）は、言語の正確な組版を実現するための重要な制御文字です。特に、合字を伴う複雑な文字体系において、文字の連結を制御し、意図した通りにテキストを表示させるために不可欠な存在です。ZWNJの適切な使用は、テキストの可読性を向上させるだけでなく、誤解を防ぎ、情報の正確な伝達に貢献します。

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