ソニー・ダイナミック・デジタル・サウンド

ソニー・ダイナミック・デジタル・サウンド（Sony Dynamic Digital Sound：SDDS）は、ソニーシネマプロダクツ社（現：Sony Cinema Products Corporation）が開発した、映画館向けのデジタル音声システムです。これは音声符号化方式と、それを用いた劇場音響システムの総称を指します。SDDSが初めて採用された作品は、1993年のアメリカ映画『ラスト・アクション・ヒーロー』で、この作品は7.1chサラウンド（正式には8ch）で上映されました。

概要

SDDSは、映画用35mmフィルムの両端に音声圧縮データを光学的に記録する方式を採用しています。これにより、最大8チャンネルのサラウンド再生が可能となっています。特徴的なのは、サブウーハーチャンネルも全帯域を再生できる能力を持つため、システム全体としては8chと表記される点です。スピーカーの配置は、フロントにレフト、レフトセンター、センター、ライトセンター、ライトの5チャンネル、サブウーハー1チャンネル、そしてサラウンド用にレフトサラウンドとライトサラウンドの2チャンネルという構成です。これは、ドルビーデジタルプラスなどの7.1chシステムとは異なり、70mmフィルムのスピーカー配置に類似しています。

音声データの圧縮にはATRAC方式が用いられており、圧縮率はリニアPCMに対して約1/5です。これは、DATASATデジタルサウンドよりもわずかに圧縮率が高い程度です。サンプリング周波数は44.1kHz、ビット深度は20bitです。転送レートは2.2Mbpsですが、実際には音声チャンネルに加えて、4チャンネルのバックアップ音声信号やその他の付属データも同時に読み込まれています。

SDDSの特筆すべき点は、デジタルデータのバックアップ機能です。フィルムの片側のトラックの音声を、もう片方のトラックの異なる位置にも記録することで、どちらかのトラックに傷がついた場合でも、もう片方のトラックからデータを再生できます。これは他のデジタル音響システムにはない独自の機能です。さらに、従来のアナログ音声トラックも記録されているため、デジタル音声の再生に問題が発生した場合には、アナログ音声で上映を続けることが可能です。これにより、三重のバックアップ体制が確保されています。

特徴

SDDSは現在、劇場での再生にのみ対応しており、一般家庭向けのフォーマットは存在しません。また、デジタルデータがフィルムの両端に記録されているため、上映期間が長くなるとフィルムに傷がつきやすく、再生時にエラーが発生し、アナログ音声での上映に切り替わるケースが多くなります。日本国内では、再生機器の普及が進んでおらず、SDDSでの上映に対応できる映画館は限られています。

SDDSで上映している映画館 (一部)

イオンシネマ久御山
ユナイテッドシネマアクアシティお台場 (旧シネマメディアージュ)
シネマイクスピアリ
札幌シネマフロンティア
TOHOシネマズ市川コルトンプラザ
ユナイテッド・シネマ真正16
MOVIX利府
TOHOシネマズ日比谷スクリーン12・13
109シネマズ木場
イオンシネマ海老名

関連項目

* デジタル音響システム

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