ソユーズMS-19

ソユーズMS-19：宇宙での映画撮影という挑戦

ソユーズMS-19は、2021年10月5日に打ち上げられたロシアのソユーズ宇宙船による有人飛行です。このミッションは、147回目のソユーズ宇宙船による有人飛行であり、ロシア人コマンダーのアントン・シュカプレロフ、映画監督のクリム・シペンコ、女優のユリア・ペレシルドが搭乗しました。特に、シペンコとペレシルドはISSに約12日間滞在し、宇宙空間で映画『Вызов（挑戦）』の撮影に臨んだことが大きな話題となりました。

クルー

コマンダー: アントン・シュカプレロフ
映画監督: クリム・シペンコ
* 女優: ユリア・ペレシルド

ミッションの背景と映画プロジェクト

このミッションの背景には、ロスコスモス、チャンネル1、イエロー、ブラック・アンド・ホワイトスタジオの合弁事業による映画プロジェクトがありました。2021年5月14日、ロシア省庁間委員会は、アントン・シュカプレロフ宇宙飛行士をコマンダーとし、映画『The Challenge』のクルーであるユリア・ペレシルドとクリム・シペンコをソユーズMS-19でISSへ送り込むことを決定しました。彼らはガガーリン宇宙飛行士訓練センターで訓練を受け、打ち上げ前の準備に臨みました。撮影機材はプログレスMS-17でISSに輸送されました。

当初の計画では、シペンコとペレシルドは2021年10月17日にオレッグ・ノヴィツキー宇宙飛行士と共にソユーズMS-18で地球に帰還することになっていました。また、ソユーズMS-18でISSに到着したピョートル・ドゥブロフ宇宙飛行士とマーク・ヴァンデ・ヘイ宇宙飛行士は、シュカプレロフと共にソユーズMS-19で帰還する予定でした。ソユーズMS-19は2022年3月28日に着陸しました。

打ち上げとドッキング

ソユーズMS-19は2021年10月5日08:55:02 UTCに打ち上げられ、3時間軌道2周回交差プロフィルに従い、ISSのラスヴェットモジュールに12:22:31 UTCにドッキングしました。宇宙船のコマンダーであるアントン・シュカプレロフが手動ドッキングシステムを操作しました。

反響

この映画プロジェクトは、宇宙開発コミュニティ内外から様々な反応を受けました。ロスコスモスの首脳であるドミトリー・ロゴージンは、この映画を「ロスコスモスが、普通の2人の人を約3〜4ヶ月で飛行する準備をさせることができるかどうかを確認する実験」と位置付けました。しかし、一部からは、訓練された宇宙飛行士を排除することや、公金の悪用、非科学的な目的のためにステーションのリソースを使用することは違法であるとの批判も上がりました。ロシアの検事総長、イゴール・クラスノフは、宇宙ステーションの資源の使用が違法であるかどうかの調査を開始しました。また、ロスコスモスの有人飛行部門の責任者セルゲイ・クリカレフは、このプロジェクトに反対して発言したことで一時的に地位を失いましたが、現役宇宙飛行士からの抗議で数日後に復帰しました。

映画について

クリム・シペンコは、監督、オペレーター、アートディレクター、メークアップアーティストを兼任し、ISS船内で35分から40分の映画を撮影する予定でした。オレッグ・ノヴィツキーとピョートル・ドゥブロフも映画に出演し、ドゥブロフとマーク・T・ヴァンデ・ヘイが映画製作を援助しました。シュカプレロフも映画のいくつかのシーンに登場しました。

ロシア側モジュールの拡張

2020年秋にロスコスモスが起草したISSフライトマニフェストでは、2021年11月24日にプリチャルモジュールを打ち上げ、2日後にナウカの天底側ポートにドッキングすることになっていました。プリチャルモジュールは2021年にロシア側モジュール（ROS）に追加される2番目のモジュールです。プリチャルの1つのポートにはナウカモジュールとのドッキングを可能とするアクティブ・ハイブリッド・ドッキング・ポートが装備されています。残りの5つのポートは、ソユーズおよびプログレス輸送機や、より重たいモジュールや、ドッキングシステムが変更された将来の宇宙船とのドッキング可能なパッシブ・ハイブリッド・ポートとなっています。これによって、ロシア軌道セグメントは2024年以降に中国の天宮宇宙ステーションないし、自国で運営するステーションとドッキングすることが可能になります。

アントン・シュカプレロフによる船外活動は、プリチャルがISSに到着した後に計画されました。2022年までに6回の船外活動が続き、ナウカモジュールとプリチャルモジュールのロシア側モジュールへの統合が完了する予定です。

ソユーズMS-19は、宇宙開発の新たな可能性を切り開くとともに、様々な議論を呼んだミッションとして、その名を歴史に刻みました。

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