タスク (潜水艦)

アメリカ海軍潜水艦タスク（USS Tusk, SS-426）の生涯

アメリカ海軍のバラオ級[[潜水艦]]の一隻であるタスク（USS Tusk, SS-426）は、その名の由来を大西洋産の食用魚アツカワダラの英名「タスク」に持ちます。

起工から就役、初期の活動

1943年8月23日、ペンシルベニア州フィラデルフィアのクランプ造船所で起工されたタスクは、1945年7月8日にキャロリン・パーク・ミルズによって命名、進水しました。1946年4月11日、レイモンド・A・ムーア中佐の指揮下で正式に就役しました。

就役後、タスクは南大西洋での整調巡航とラテンアメリカ諸国への親善訪問を実施。ブラジルのリオデジャネイロ、バイーア、オランダ領西インド諸島のキュラソー島、そしてパナマ運河地帯のコロンを訪問した後、6月にはコネチカット州ニューロンドンに帰還しました。翌年には、東海岸沿いで作戦活動に従事し、1947年1月には中部大西洋での艦隊戦術演習にも参加しています。その後、フィラデルフィア海軍造船所でのオーバーホールを経て、コロンビア大学やウッズホール海洋研究所と協力し、大西洋大陸棚沿いでの海洋学調査に1947年10月まで従事しました。

GUPPY改修による変貌

1947年、タスクはポーツマス海軍造船所に入渠し、GUPPY改修を受けました。この改修は、タスクの水中での活動能力を飛躍的に向上させました。より高出力のバッテリーへの交換、船体の流線型化、大型化されたセイル、そしてシュノーケルの装備により、潜望鏡深度でのディーゼル機関の使用と潜航中のバッテリー充電が可能になりました。これにより、タスクは単なる潜水可能な艦艇から、真の潜水艦へと生まれ変わりました。水中速力は10から15ノットに向上し、潜航活動範囲も拡大しました。

1948年初夏に現役復帰後、パナマ運河地帯で整調訓練と模擬哨戒を実施。8月にはメリーランド州アナポリスの海軍士官学校を訪問し、成績優秀者が見学しました。秋から冬にかけては、アメリカ海軍およびNATO軍との演習に参加。カリブ海から北極圏まで、広範囲での活動を展開しました。1949年に入ると活動範囲はやや制限され、前半6ヶ月はロードアイランド州ニューポートで第2潜水艦開発グループと活動しました。7月には再びNATO軍に加わり、北大西洋での演習に参加し、その際には北アイルランドのロンドンデリー、イングランドのポーツマスを訪問しました。

コチーノの沈没と救助活動

NATOとの共同演習終盤、タスクは姉妹艦コチーノ（USS Cochino, SS-345）を含む部隊と共に活動していました。1949年8月25日、コチーノはノルウェー沖でバッテリー爆発事故を起こし、タスクは救助のために現場へ急行しました。救命筏を使ってコチーノの負傷者に医薬品を供給する中、荒波によって筏が転覆し、コチーノの士官と艦船局職員が海に投げ出されました。二人は救助されたものの、タスクの甲板上で人工呼吸を行っている最中に波が押し寄せ、民間人と11名のタスク乗員が海に流されました。辛うじて4名の乗員が救助されました。

この事故の後、タスクはコチーノと共にノルウェーのハンメルフェストへ向かいました。しかし、その途中でコチーノの別のバッテリーが爆発し、船体に海水が浸入し始めました。タスクは荒海の中、沈みゆくコチーノに並走し、悪条件下でコチーノ乗員全員を救助しました。コチーノはその後沈没し、タスクはハンメルフェストへ向かいました。

その後の活動と地中海配備

帰国後、タスクはニューロンドン沖での沿岸活動を再開し、潜水学校の支援任務にあたりました。1951年中旬からは第2潜水艦開発グループに再び配属され、1952年夏までは艦隊との定期演習を実施しました。その後、第10潜水戦隊に配属され、年末までニューロンドン沖での通常任務を行いました。続いて、第6艦隊との地中海配備に6ヶ月間従事。1953年初夏に帰国し、再びニューロンドン沖での沿岸活動を再開しました。1954年初めにはカリブ海で活動し、その後ニューロンドン沖での沿岸活動を経て、北ヨーロッパ海域への巡航を行いました。この巡航では、北アイルランドのベルファスト、スコットランドのグラスゴーを訪問し、NATO軍との共同演習にも参加しました。

1950年代前半には、活動パターンを確立し、1954年から73年の間にさらに4回の地中海配備を行いました。当初は、海外配備の間に東海岸での活動が延長されていました。1954年の北ヨーロッパ配備後、次の地中海配備まで6年の間隔があり、その間、アメリカとカナダの両軍による共同訓練や、1961年のNATO軍との演習に従事しました。ニューロンドン沖での3年間の活動後、1964年の秋には再びヨーロッパ水域へ赴き、NATO軍との訓練を行いました。1966年には第6艦隊との3度目の地中海配備を経験し、その後はアメリカ沿岸での任務を行いました。1967年には北ヨーロッパ水域に戻り、NATO各国軍との訓練を行い、1968年から1969年前半にかけてニューロンドンを拠点に活動し、原子力[[潜水艦]]との訓練も実施しました。1969年7月には4度目の地中海配備を行い、10月に東海岸での作戦活動を再開しました。

退役と台湾海軍へ

約3年間をニューロンドンで活動した後、タスクは5度目で最後の第6艦隊との巡航を実施しました。この配備が終了すると、現役最後の年をニューイングランド近辺で過ごし、1973年10月18日にニューロンドンで退役し、同日除籍されました。その後、台湾へ売却されました。

台湾海軍での「海豹」

台湾海軍では、タスクは「海豹」（ROCN Hai Pao, SS-792）として再就役しました。艦番号は当初SS-92、続いてSS-794、最終的にSS-792と変更されました。台湾への売却理由は対潜水艦戦訓練のためとされ、引き渡し前に魚雷発射管は溶接され封印されました。しかし、台湾海軍は1976年に魚雷発射管を再び使用可能な状態に戻し、イタリアから最新型魚雷を購入しました。2014年7月時点で海豹は高雄海軍基地に停泊しており、耐圧殻のゆがみと金属疲労のため水深20メートルまでしか潜水できないとされていました。2017年1月18日には報道陣に公開され、1973年にアメリカから引き渡された状態がほぼそのまま残されていることが確認されました。就役から71年が経過していました。

タスクは、その長い歴史の中で、アメリカ海軍、そして台湾海軍において重要な役割を果たしました。その活動は、冷戦期の国際情勢を反映し、潜水艦技術の進化とともに変化していきました。

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