タダイ

タダイ（ユダ・タダイ）とは

タダイ、またはユダ・タダイ、ユダ・タデオ、聖ユダとも呼ばれる人物は、新約聖書に登場するイエス・キリストの十二使徒の一人です。『マタイによる福音書』や『マルコによる福音書』では「タダイ」と記され、『ルカによる福音書』では「ヤコブの子ユダ」として登場します。伝統的にこれらは同一人物と解釈されています。イエスを裏切ったイスカリオテのユダとは別人です。

混乱する伝承

タダイに関する伝承は複雑で、その出自には諸説あります。小ヤコブの兄弟であったとも、イエスの親族（「主の兄弟」）であったとも言われています。しかし、主の兄弟ユダとタダイは別人とする説も存在します。

西方教会では、イスカリオテのユダとの混同を避けるためか、タダイは意図的に軽視され、「忘れられた聖人」と呼ばれることもありました。そのため、信徒たちはユダの名において祈ることを避ける傾向にありました。一方で、西方ではユダは敗北者の守護聖人とされています。

東方教会では、タダイはバルトロマイと共にアルメニアに宣教したと伝えられ、この地では深く崇敬されています。アルメニア使徒教会は、「タダイとバルトロマイによって建てられた教会」と自負しています。

新約聖書におけるタダイの記述は非常に少ないため、その生涯に関する情報はほとんどが伝承に基づいています。

伝承に基づく生涯

伝承によれば、タダイはイエスの故郷であるガリラヤのパネアス出身で、イエスに従った女性の一人、マリア（クレオパの妻）の子であったとされています。父クレオパはキリストの復活を伝えたために殺害されたと伝えられています。また、タダイの兄弟の一人である小ヤコブは、初期からイエスの弟子でした。

小ヤコブは、一部の伝承で『使徒言行録』などに登場する「主の兄弟ヤコブ」と同一視されることがあります。このことから、「主の兄弟ユダ」とタダイの同一視が生じました。これらの伝承では、母マリアが聖母マリアの従姉妹であるとされ、「主の兄弟」という呼称の根拠となっています。この伝承は主に西方で広まっています。

しかし、東方教会には、主の兄弟をナザレのヨセフの子で、イエスの異母兄弟とする伝承があり、この場合、タダイは「主の兄弟」とはみなされません。

イエスの親族であるユダは、後に結婚して子供をもうけたとされています。95年頃にはユダの子孫が生存していたという記録もあります。

古代の資料によると、主の兄弟ユダはユダヤ、サマリア、イドマヤ、シリア、メソポタミア、リビアで福音を宣教したとされています。62年にはエルサレムに戻り、兄弟シメオンのエルサレム司教任命に協力したと伝えられています。ユダは兄弟シモンと共にペルシャで殉教したと考えられており、伝説では彼の遺骸はローマに運ばれ、現在のサン・ピエトロ大聖堂の場所に埋葬されたとされています。

ユダの絵は、しばしば光冠を伴って描かれます。これは、彼が他の使徒たちと共に聖霊降臨において聖霊を受けたことを示しています。

信仰

西方教会でタダイへの信心が盛んになったのは1800年代に入ってからです。イタリアとスペインで始まり、南米を経て、1920年代にはシカゴからアメリカ全土に広がりました。聖ユダはシカゴ警察の守護聖人でもあります。

聖ユダへの九日間の祈りは、特にヨーロッパからアメリカに移住した人々によって、世界恐慌から第二次世界大戦にかけての困難な時期に盛んに行われました。

世界最大のオイルランプは、インドのケーララ州クータットゥクラムの聖ユダ教会に設置されています。タダイの記念日は、カトリック教会では10月28日、正教会では6月19日に祝われています。

タダイの名が登場する作品

映画

マイ・ボディガード（2004年）
きみがくれた未来（2010年）

脚注

関連項目

* 聖書の登場人物の一覧

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