タボ・ムベキ

タボ・ムヴイェルワ・ムベキ

タボ・ムヴイェルワ・ムベキ（Thabo Mvuyelwa Mbeki、1942年6月18日 - ）は、南アフリカ共和国の政治家であり、第9代大統領を務めました。彼はまた、副大統領、国民議会議員、アフリカ民族会議（ANC）議長、アフリカ連合総会議長といった要職も歴任しました。

生い立ちと教育

ムベキは、南アフリカ連邦ケープ州ムベウレニで生まれました。彼は幼少期をイウデワとバターワースの小学校で過ごし、その後、アリスのラブデール学校で中等教育を受けました。しかし、1959年に学生ストライキに参加したことが原因で、学校を放校処分となりました。その後、ロンドン大学の外部学生として経済学の学位を取得し、サセックス大学では南アフリカの黒人として初めて経済学修士号を取得しました。

反アパルトヘイト闘争

1961年12月にはアフリカ学生協会の幹事に選出されましたが、翌年ANCが非合法化されたため、ロンドンに亡命しました。亡命期間中もANCの活動を続け、アパルトヘイト政策に反対する活動を積極的に行いました。

1993年、ネルソン・マンデラ釈放後に南アフリカへ帰国し、ANCの幹部として政治活動を再開しました。

大統領としての業績と課題

1999年、総選挙でANCが勝利し、ムベキはマンデラの後継として大統領に就任しました。彼はマンデラの経済成長路線を堅持し、またアフリカ統一機構からアフリカ連合への改組を主導するなど、アフリカの盟主として積極的に紛争解決に取り組みました。これらの功績は、経済界や主要国から高く評価されました。2004年の総選挙でも勝利し、大統領に再任されました。BRICSの一員として、中国、インド、ブラジル、ロシアとの関係も強化しました。

しかし、ムベキの大統領としての業績には批判的な側面もありました。彼はエイズの原因について科学的コンセンサスを拒否し、HIVが原因ではないとする少数派の科学者の見解を支持しました。この政策により、南アフリカでは推定33万人が死亡したとする調査結果も出ています。

また、所得格差や犯罪率の抑制、エイズ問題に関して有効な政策を打ち出せない状況に対し、副大統領のジェイコブ・ズマを中心に党内から批判が起こりました。2005年には、汚職疑惑を理由にズマを罷免しようとしましたが、ズマはレイプ疑惑で起訴されたものの無罪となり、反ムベキの活動を展開しました。2007年のANC議長選挙でムベキはズマに敗れました。

2008年、ズマ率いるANC全国執行委員会から辞職勧告を受け、大統領を辞任しました。

政策と人物

ムベキは、進歩主義的なANC党の中では保守派として知られていました。経済政策では、社会主義を前提とする党内の反対を押し切り、新自由主義を受け入れました。ただし、民主社会主義者として混合経済体制を維持しました。

彼はコサ人で、父はANCや南アフリカ共産党で活躍したゴヴァン・ムベキ、母はエピネットです。弟に経済学者のモエレツ・ムベキがいます。ムベキ自身もかつて南アフリカ共産党に入党していました。

妻のザネレ・ドラミニとは1974年に結婚しましたが、2人の間に子供はいません。また、16歳の時に交際していたオリーブ・ムパフルワとの間にモンワビシ・クワンダ・ムベキという息子がいましたが、1981年に失踪し、南アフリカ政府により殺害されたとみられています。

タボ・ムベキは、南アフリカの歴史において重要な役割を果たした政治家の一人であり、その功績と課題は、今後も議論され続けるでしょう。

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