タラヨウ

タラヨウ（多羅葉）

タラヨウ（学名: Ilex latifolia）は、モチノキ科モチノキ属に分類される常緑性の高木です。その特徴的な性質と、歴史や文化との関わりから、人々に親しまれてきました。

名称の由来

和名である「タラヨウ」は、葉の裏に傷をつけると黒く変色する性質が、インドで経文を書くのに使われたタラジュ（多羅樹）に似ていることに由来します。タラジュはヤシ科の植物で、その葉を乾燥させたものが経典の筆記に用いられていました。また、植物学者の上原敬二は、サンスクリット語の「ペイタラ」が語源であるという説も提唱しています。

中国では、「大葉冬青」という名前で呼ばれています。

特徴

分布と生育環境

タラヨウは、日本の本州（静岡県以西）、四国、九州と、朝鮮半島、中国に分布しています。山地に自生し、特に寺院によく植えられています。関東地方でも植樹されていることがあります。

樹木としての特徴

• - 樹高: 10～20メートルに達する高木です。
• - 樹皮: 灰褐色で滑らかですが、若い木では細かい裂け目が見られます。
• - 一年枝: やや太く、緑色で無毛です。
• - 葉: 長楕円形で大きく肉厚、長さは20センチメートルほどにもなります。葉の表面は濃い緑色で光沢があり、縁には細かい鋸歯があります。
• - 花: 4月から6月にかけて、淡黄緑色の小さな花を葉の付け根に多数咲かせます。雌雄異株です。
• - 実: 秋には、直径8ミリメートルほどの球形の赤い実がなります。
• - 冬芽: 枝先の頂芽は円錐形で大きく、側芽は丸い花芽で葉の付け根につきます。

葉の特殊な性質

タラヨウの葉の裏面に傷をつけると、その部分が黒く変色します。この性質を利用して、文字や絵を描くことができ、古くから様々な用途に用いられてきました。

利用

文字を書く

葉の裏に傷をつけると黒く変色する性質から、日本では古くから経文を書いたり、占いに使われたりしました。このため、寺社に多く植えられています。また、この性質から「ジカキシバ」や「エカキシバ」とも呼ばれます。

戦国時代には、タラヨウの葉に文字を書いて情報のやり取りをしたという説もあり、これが「はがき（葉書）」の語源になったとも言われています。このため、「葉書の木」や「郵便局の木」とも呼ばれることがあります。東京中央郵便局の前にも植えられています。

占い

葉を火であぶると、熱で破壊された組織が短時間で黒く変色し、黒い円模様が浮かび上がります。この模様を「円紋」または「死環」と呼び、寺社で吉凶を占う際に利用されていました。

その他

中国では「苦丁」と呼ばれ、葉を煎じて苦丁茶として飲用されています。

葉書の語源について

「レファレンス協同データベース」には、タラヨウが葉書の語源であるか調査した事例が登録されています。しかし、語源事典にはタラヨウの記載がなく、諸説あり、確かなことはわかっていません。ただし、葉書の変形として十分に利用できることは確かです。

参考文献

• - 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社、2014年
• - 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年

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