ターイフ

ターイフ：サウジアラビアの避暑都市と歴史の交差点

サウジアラビア西部、マッカ州に位置するターイフは、標高1,879mの高地に広がる都市です。2004年時点の人口は約52万人を数え、メッカから南東約97kmの距離にあります。年間を通して温暖な気候に恵まれていますが、特に夏季にはリヤドから政府機能が移転するほど涼しく、サウジアラビア有数の避暑地として知られています。

涼を求めて集う人々

夏の暑さから逃れるため、サウジアラビア国内から多くの観光客がターイフを訪れます。サウジ王室の夏の離宮が置かれていることからも、その人気ぶりが伺えます。アスィール州など、サウジアラビア国内には他の避暑地もありますが、ターイフはメッカへの近さと、整備された高速道路網によって高い利便性を誇ります。そのため、ターイフで宿泊し、日帰りでメッカへの小巡礼を行うことも可能です。この利便性こそが、ターイフを他の避暑地と一線を画す魅力となっています。

長い歴史を刻む都市

ターイフの歴史は古く、6世紀には既に集落が形成されていたとされています。1517年にはオスマン帝国の支配下に置かれ、1916年までその支配が続きました。この期間には、1881年にオスマン帝国の元宰相ミドハト・パシャが流罪され、ここで命を落としたという歴史的な出来事もありました。1916年、メッカ太守のハーシム家がヒジャーズ王国を建国するとターイフはその支配下に置かれましたが、1924年にはナジュド王国のアブドゥルアズィーズ・イブン＝サウードによって征服され、サウジアラビア領となりました。

条約締結の地としての役割

古くから避暑地として発展してきたターイフは、充実した宿泊施設やインフラを備えていたことから、アラブ世界における外交交渉の場としても重要な役割を果たしました。1934年には、イエメン王国との間でターイフ条約が締結され、戦争状態を終結させた歴史があります。さらに、1989年にはレバノン内戦の終結に向けた和平交渉が行われ、国民和解憲章（ターイフ合意）が成立しました。この合意はレバノン内戦終結の大きな転換点となり、ターイフは平和への貢献を果たしたと言えるでしょう。また、1990年の湾岸戦争では、クウェートのジャービル・アル＝アフマド・アッ＝サバーハ首長が亡命政権を樹立し、クウェート解放までこの地を拠点としました。

気候

ターイフは高地に位置するため、サウジアラビアの他の地域と比較して気温が低く、特に夏は涼しく過ごしやすいのが特徴です。この快適な気候が、ターイフを避暑地としてだけでなく、政治交渉の場としても魅力的な場所とした理由の一つと言えるでしょう。

まとめ

ターイフは、涼しい気候と優れた立地条件、そして歴史的な重みを持つ都市です。避暑地としてだけでなく、政治交渉の重要な舞台としての役割も果たし、アラブ世界の歴史に大きな足跡を残しました。今後も、その魅力は多くの人々を引きつけ続けることでしょう。

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