ダイスをころがせ

ローリング・ストーンズの代表曲のひとつ「ダイスをころがせ」(原題: Tumbling Dice)は、1972年発表のアルバム『メイン・ストリートのならず者』に収録されている楽曲です。ミック・ジャガーとキース・リチャーズの共作で、独特のグルーヴが特徴的なスワンプ・ロックナンバーとして知られています。

この楽曲のルーツは1970年に遡ります。当時、ストーンズは前作『スティッキー・フィンガーズ』の制作中で、この曲の初期バージョンとなる「グッドタイム・ウィメン」が録音されました。しかし、リズムや歌詞は『メイン・ストリートのならず者』に収録されたバージョンとは大きく異なっていました。「グッドタイム・ウィメン」は後に『メイン・ストリートのならず者』のデラックス・エディションのボーナス・トラックとして収録されています。

『メイン・ストリートのならず者』のレコーディングセッションで、「グッドタイム・ウィメン」は再評価され、歌詞の書き換え、テンポの調整、そしてタイトル変更を経て、「ダイスをころがせ」として生まれ変わりました。この際、ミック・テイラーは通常担当するギターではなくベースを演奏し、リードギターはリチャーズが担当しています。ドラムは、チャーリー・ワッツに加え、プロデューサーのジミー・ミラーも参加しています。

興味深いのは、ジャガー本人がこの曲について低い評価をしている点です。「みんなあの曲のどこが気に入ってるのかわからない。歌詞が今一つなんだよな」とコメントしているそうです。しかし、商業的な成功は著しく、シングルカットされると全英5位、全米7位というヒットを記録しました。

「ダイスをころがせ」は、ライブでも頻繁に演奏されており、ストーンズのツアーには欠かせない楽曲となっています。公式ライブアルバムである『ラヴ・ユー・ライヴ』(1977年)や『シャイン・ア・ライト』(2008年)にも収録され、さらに『レディース＆ジェントルマン』(1974年)や『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』(1983年)といった映像作品にもライブパフォーマンスが収められています。これらは、この曲が長年に渡ってストーンズのライブの定番曲であり続けていることを示しています。

1977年には、リンダ・ロンシュタットがアルバム『夢はひとつだけ』でこの曲をカバーし、シングルカットすると全米32位にランクインするなど、他のアーティストにも影響を与えました。

さらに、「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」(2021年版)において86位にランクインするなど、高い評価を得ていることも特筆すべき点です。このランキングは、この曲がロック史における重要な楽曲として認められていることを示しています。

このように、「ダイスをころがせ」は、その誕生から現在まで、音楽史に大きな足跡を残した楽曲と言えるでしょう。初期バージョンからの変遷、メンバーの演奏、商業的成功、ライブでの人気、そしてカバー版など、様々な要素が絡み合い、この曲の魅力をさらに深めています。ジャガー自身の評価とは裏腹に、この曲は今もなお、多くのリスナーを魅了し続けているのです。

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