ダイナマイトどんどん

ダイナマイトどんどん：笑いと熱狂が炸裂する異色の任侠コメディ

1978年、東映配給により公開された『ダイナマイトどんどん』は、岡本喜八監督がメガホンを取り、菅原文太を主演に迎えた任侠映画です。終戦直後の昭和25年、米軍占領下の北九州・小倉が舞台。抗争を繰り返す岡源組と橋伝組のヤクザたちが、警察署長の提案により、抗争の代わりにヤクザ対抗野球大会を開催することになります。

ヤクザ対抗野球！予測不能の展開

主人公の岡源組・加助（菅原文太）は知略を駆使して橋伝組の攻撃をしのぎますが、痺れを切らした橋伝組は秘密兵器・銀次（北大路欣也）を投入します。女絡みの事件で指を失い、ヤクザとなった銀次は、魔球を武器に岡源組を圧倒。試合は予想外の展開に突入していきます。

スタッフ・キャスト：豪華競演

本作には、映画界の巨匠・岡本喜八監督をはじめ、多くのベテランスタッフが集結。脚本は井手雅人、古田求の共作で、火野葦平の『新遊侠伝』を原案に、オリジナルストーリーが展開されます。

キャストは、菅原文太、北大路欣也のほか、嵐寛寿郎、金子信雄、岸田森、中谷一郎、フランキー堺など、個性豊かな俳優陣が勢ぞろい。脇を固める俳優陣の演技にも注目です。

製作秘話：25年越しの構想と東映、大映の協力

脚本家の井手雅人は、自身の高校野球部コーチ経験と、新東宝の映画『新遊侠伝』の印象を元に、25年もの歳月をかけてこの企画を温めてきました。当初は菅原文太主演で東映に企画を持ち込んだものの却下され、その後、大映と東映の協力体制の下で実現しました。

脚本の共作者である古田求は、自身の幼少期の体験や長谷川伸の作品から着想を得て、登場人物を創造。中でも主人公・加助は、長谷川伸作品に登場する数々の侠客を参考に造形されています。

撮影は1978年7月末にクランクイン。野球シーンは多摩川の土手で撮影され、野球経験者である菅原文太は、吹き替えなしで撮影に臨みました。製作費は5億円から6億円と推定されています。

スポーツ映画としての側面と興行戦略

本作は、アメリカで流行していたスポーツ映画『がんばれ!ベアーズ』などを意識した、ヤクザ映画のパロディとも評されています。当時、日本ではスポーツ映画が興行的に成功しておらず、東映もスポーツ映画のヒットに意欲的でした。本作も、その流れの中で製作された作品の一つと言えます。

公開は1978年10月7日。同日には、高倉健主演の角川映画『野性の証明』も公開され、興行争いを繰り広げました。このため、菅原文太は、CM出演を通じて本作の宣伝に力を入れるなど、積極的な宣伝活動を行い、角川映画に対抗しました。

興行成績と作品評価

『ダイナマイトどんどん』は、同時期公開の他の邦画大作と同様に、興行成績は期待を下回る結果となりました。しかし、批評家の間では賛否両論がありながらも、岡本喜八監督独特の世界観や、ヤクザ映画の既成概念を覆す斬新な作風などが評価されています。

キネマ旬報ベストテン第7位、映画芸術ベストテン第6位にランクインするなど、一定の評価を獲得しました。また、宮下順子はブルーリボン賞助演女優賞を受賞しました。

最後に

『ダイナマイトどんどん』は、任侠映画とスポーツ映画の要素を融合させた、異色の作品です。ヤクザ映画特有の暴力描写の中に、ユーモアと痛快さが共存する、岡本喜八監督ならではのエンターテインメント作品となっています。豪華キャストの競演、予測不能の展開、そして時代背景も見どころです。

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