ダニエル・シュミット

ダニエル・シュミット（1941年12月26日 - 2006年8月5日）は、スイスの映画監督、脚本家、オペラ演出家として知られています。彼は、映画とオペラの両分野で才能を発揮し、国際的に高い評価を受けました。

生い立ちと映画への傾倒

1941年、スイスのグラウビュンデン州フリムス＝ヴァルトハウスに生まれたシュミットは、ホテルを経営する祖父母のもとで育ちました。14歳頃から映画に魅せられ、特にマックス・オフュルスの作品に強く影響を受けました。同時に、オペラにも情熱を注ぎ、マリア・カラスをはじめとするベルカント・オペラのディーバたちに魅了され、各地のオペラハウスを巡るバイク・ツーリングを楽しんでいました。

映画監督としてのキャリア

1962年、ベルリン自由大学に入学したシュミットは、1966年にライナー・ヴェルナー・ファスビンダーと出会い、1971年にはファスビンダーとその当時の妻イングリット・カーフェンと共に映画製作会社「タンゴ・フィルム」を設立しました。1970年、テレビ映画『主人の蝋燭を節約するためにすべてを暗闇のなかで行うこと』で映画監督デビューを果たします。1972年には、自らが育ったシュバイツァーホフ・ホテルを舞台にした長編デビュー作『今宵かぎりは…』がルキノ・ヴィスコンティに絶賛され、ヴェネツィア国際[[映画祭]]で新人監督賞を受賞しました。その後も、『ラ・パロマ』（1974年）やファスビンダーの戯曲を映画化した『天使の影』（1976年）など、意欲的な作品を発表し続けました。また、俳優としても、ハンス＝ユルゲン・ジーバーベルクの『ルートヴィヒII世のためのレクイエム』（1972年）やヴィム・ヴェンダースの『アメリカの友人』（1977年）、ファスビンダーの『リリー・マルレーン』（1981年）などに出演しています。

ドキュメンタリー映画と日本での紹介

1980年代には、ポール・モランの小説を映画化した『ヘカテ』（1982年）や、ダグラス・サークの晩年を描いたドキュメンタリー『人生の幻影』（1983年）などを制作しました。この時期に、シュミットの作品が初めて日本で紹介され、『ラ・パロマ』が東京国立近代美術館フィルムセンターで上映されたり、「ダニエル・シュミット映画祭」が開催されました。映画評論家の蓮實重彦は、この頃にシュミットを「73年の世代」と定義しましたが、シュミット自身は1973年に劇場用映画を発表していません。

オペラ演出家としての活動

1980年代からはオペラ演出家としても活躍し、ジャック・オッフェンバックの『青ひげ』（1984年）、アルバン・ベルクの『ルル』（1985年）、ジョアキーノ・ロッシーニの『グリエルモ・テル』（1987年）など、数々の作品をジュネーヴ大劇場で演出しました。チューリッヒ歌劇場では、『シャモニーのリンダ』（1994年）や『ベアトリーチェ・ディ・テンダ』（1994年）、『イル・トロヴァトーレ』（1996年）などを演出し、特にエディタ・グルベローヴァ主演の作品は高い人気を博しました。1987年に演出した『グリエルモ・テル』は、翌年にテレビ映画として映像化もされています。

後年の活動と晩年

1995年には、ユーロスペース製作で坂東玉三郎が主演した『書かれた顔』や大野一雄に関する短編ドキュメンタリー『KAZUO OHNO』を日本で撮影しました。1999年には、7年ぶりの長編劇映画『ベレジーナ』を発表し、ロカルノ国際[[映画祭]]で名誉豹賞を受賞しました。2006年、癌のため64歳でこの世を去りました。2010年には、彼のドキュメンタリー映画『ダニエル・シュミット─思考する猫』が制作され、多くの関係者が彼の業績を振り返りました。

主な作品

主人の蝋燭を節約するためにすべてを暗闇のなかで行うこと （1970年）
今宵かぎりは… （1972年）
ラ・パロマ （1974年）
天使の影 （1976年）
ヴィオランタ （1978年）
カンヌ映画通り （1981年）
ヘカテ （1982年）
人生の幻影 （1983年）
トスカの接吻 （1984年）
デ・ジャ・ヴュ （1987年）
Guglielmo Tell （1988年）
アマチュア （1990年）
季節のはざまで （1992年）
書かれた顔 （1995年）
KAZUO OHNO （1995年）
ベレジーナ （1999年）

ダニエル・シュミットは、映画とオペラという異なる分野でその才能を発揮し、独特の映像美と演出で多くの人々を魅了しました。彼の作品は、今日でも多くの映画ファンやオペラ愛好家から愛されています。

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