ダマスカス門

ダマスカス門は、エルサレム旧市街の北西に位置する主要な城門の一つであり、その美しさと人々の賑わいで知られています。この門は、旧市街のアラブ人地区の市場の端にあり、かつてはナブルスを経由してシリアの首都ダマスカスへと続く街道の出発点でした。そのため、現代英語では「ダマスカス門」と呼ばれ、現代ヘブライ語では「シェケム門」または「ナブルス門」と呼ばれています。また、アラビア語では「勝利の門」を意味するバーブ・アル・ナスル、あるいは「柱の門」を意味するバーブ・アル・アムードとも呼ばれます。特にバーブ・アル・アムードという名称は、少なくとも10世紀から使われており、紀元2世紀のローマ時代の様式を今に伝えるものです。現在のダマスカス門は、1537年にオスマン帝国のスレイマン1世によって建設されました。

ダマスカス門の特徴として、左右にそれぞれ胸壁のついた小塔（タレット）があり、それぞれに出し狭間が設けられています。また、門に向かって階段を上るヤッフォ門とは対照的に、ダマスカス門は階段を下って入る構造になっています。

歴史

歴史を遡ると、フラウィウス・ヨセフスの『ユダヤ古代誌』には、エルサレム旧市街の3番目の外側の城壁が、紀元37年から41年頃にアグリッパ1世によって造られたと記されています。ダマスカス門は、少なくとも紀元1世紀から町の主要な入口として機能していました。また、ヘブライ語聖書の『ミドラーシュ・ラッバー』には、ローマがエルサレムを支配していた時代、ユダヤ教の師ヨハナン・ベン・ザッカイが、リッダ（ロード）に通じる町の西端の門を修復するようウェスパシアヌス帝に陳情したという記述があります。

現在の門のすぐ下には、紀元1世紀から2世紀（ハドリアヌス帝の時代）にかけて建設された古い門の遺構が残っています。ハドリアヌス帝はこの門を大規模に拡張し、通路の上に残る2世紀のまぐさ石には、ローマ統治下の町の名前「アエリア・カピトリナ」が刻まれています。

6世紀のマダバ地図には、門の正面にハドリアヌス帝の彫像を乗せたローマの戦勝記念塔が描かれており、この当時の様式が、現在の門のアラビア名である「柱の門」に反映されています。10世紀に再建された8つの門の中で、現在も当時の名前（バーブ・アル・アムード）を維持しているのはこの門だけです。

十字軍の兵士たちは、この門を聖ステファノ門（ラテン語: Porta Sancti Stephani）と呼んでいました。これは、この門がアエリア・エウドキアの時代から、教会と修道院によって聖ステファノの殉教の地とされていた場所に近かったためです。この門は、アイユーブ朝初期（1183年-1192年）にも何度か改築されています。1523年にエルサレムを訪れたリヴォルノの旅行者の記録には、この門がBâb el 'Amudという名前で、ゼデキアの洞窟のすぐ近くにあると記されています。

現在見られるダマスカス門は、オスマン帝国のスルタン、スレイマン1世の統治下で1537年に建設されました。1967年まで、胸壁のついた小塔が門を見下ろしていましたが、第三次中東戦争の際に旧市街で起こった戦闘で損傷を受けました。2011年8月には、イスラエルによって、イギリス帝国がエルサレムを支配していた20世紀初期の写真を手がかりに、胸壁が矢狭間を含めて修復されました。11の固定用建材が修復されたタレットを城壁に固定し、4枚の厚い石材で矢狭間のついた胸壁が形成されました。

ダマスカス門は、エルサレムの歴史と文化を象徴する重要な場所であり、今日でも多くの人々が訪れる賑やかな場所です。その美しい外観と歴史的背景は、訪れる人々に深い印象を与え続けています。

もう一度検索