ダライスン・ゴデン・ハーン

ダライスン・ゴデン・ハーン（1520年 - 1557年）は、モンゴル帝国の皇帝（ハーン）であり、チャハル・トゥメンの当主として知られています。彼はボディ・アラク・ハーンの長男として生まれ、激動の時代を生きました。

生涯

1520年に誕生したダライスンは、父ボディ・アラク・ハーンの跡継ぎとして期待されていました。しかし、1547年に父が崩御すると、事態は急変します。右翼のトゥメト・トゥメン当主であったアルタン・ハーンが、左翼三トゥメンに侵攻を開始し、ダライスン太子とその一派は東方へと追いやられることとなりました。

ダライスン太子は、やむを得ずチャハル部とハルハ部の一部（五オトク・ハルハ）を率い、大興安嶺山脈の東、遼河の上流域へと遊牧地を移しました。これは、彼の統治における最初の大きな試練でした。

翌1548年、ダライスンはハーンとして即位します。しかし、依然としてアルタン・ハーンとの対立は続いており、安定した政権運営は困難を極めました。

1551年、ダライスン・ハーンはアルタン・ハーンとの和睦交渉に臨み、ついに和解が成立します。この和睦により、ダライスンは八白室（ナイマン・チャガン・ゲル：チンギス・カン廟）の神前で正式にハーンとして即位することができました。これにより、彼はダライスン・ゴデン・ハーンとして歴史に名を刻むことになります。

しかし、この即位には代償も伴いました。ダライスン・ゴデン・ハーンは、元代以来の名誉ある称号「司徒」をアルタンに授け、アルタン・ハーンが「ゲゲン・ハーン」と称することを承認せざるを得ませんでした。これは、アルタン・ハーンの勢力拡大を認めるものであり、ダライスン・ゴデン・ハーンの政治的な苦悩を物語っています。

1557年、ダライスン・ゴデン・ハーンは38歳という若さで崩御しました。彼の死後、翌1558年には長男のトゥメン太子がハーン位を継承しました。

子

トゥメン・ジャサクト・ハーン
ジョント太子
ダライ・バガ・ダルハン
ダイチン太子

ダライスン・ゴデン・ハーンの短い生涯は、モンゴル帝国の動乱期を象徴するものであり、彼の決断と苦悩は、後世に様々な教訓を残しています。

参考資料

吉田順一他『アルタン=ハーン伝訳注』（風間書房、1998年、ISBN 4759910824）
宮脇淳子『モンゴルの歴史 遊牧民の誕生からモンゴル国まで』（刀水書房、2002年、ISBN 4887082444）
* 岡田英弘訳注『蒙古源流』（刀水書房、2004年、ISBN 4887082436)

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