ダラサコール国際空港

ダラサコール国際空港：リゾート開発と軍事利用の懸念

ダラサコール国際空港（Dara Sakor International Airport）は、カンボジアのココン州ボタムサコールに建設中の国際空港です。この空港は、同地域で進められている大規模なリゾート都市開発プロジェクト「ダラサコール」の一環として建設されています。

ココン州の開発状況

ココン州にはかつてココン空港が存在しましたが、カンボジア内戦終結後、長らく放置されていました。近年、ココン州では複数の空港建設計画が浮上しており、その一つがダラサコール国際空港です。また、モンドルセイマではLYPグループとバンコク・エアウェイズによる新空港計画がありましたが、新型コロナウイルスの影響で延期されています。さらに、コンポンソム湾のロン島にも新たな空港建設計画が持ち上がっています。

ダラサコール開発プロジェクト

カンボジア南部のシアヌークビルは、中国資本により巨大なリゾート地、工業地帯へと変貌を遂げました。その影響を受け、シアヌークビルから約40km離れたココン州ボタムサコールでは、手つかずの自然が残るボタムサコール国立公園周辺で、中国企業による大規模開発が進められています。

2008年、中国国有企業の天津優聯投資発展集団（UDG）は、ココン州政府と99年間の運営・管理権契約を結び、総面積450平方キロメートルに及ぶリゾート都市「ダラサコール」の開発を開始しました。38億ドルが投資され、ホテル、別荘、ショッピングモール、カジノ、ゴルフ場などのリゾート施設に加え、住宅地、医療センター、高速道路、工業団地、深海港、ダム、浄水場、発電所などが建設されています。

2019年の調査では、ココン州の人口は約12.3万人でした。UDGは、ダラサコールに年間636万人の観光客を誘致し、100万人の雇用を創出、130万人が居住する新都市を目標としています。

ダラサコール国際空港の概要

ダラサコール国際空港は、リゾート開発の一環として2016年11月に建設が始まりました。空港の敷地総面積は計画段階で23平方キロメートル、実際の空港面積は2.18平方キロメートルです。開港時の滑走路は3,200メートルですが、将来的に3,800メートルと3,200メートルの滑走路を追加する計画があります。駐機場は67,452平方メートル、旅客ターミナルビルは5,500平方メートルです。年間旅客数は最大75万人を見込んでいます。空港運営会社は浜海機場投資（Coastal Airport Investment）です。2022年4月には、カンボジア民間航空局による検査と飛行検査機の離着陸が実施されました。

軍事利用の懸念

ダラサコールの巨大開発は、米中関係の新たな緊張の火種となっています。特に、空港の規模や滑走路の長さから、軍事転用の可能性が指摘されています。この地域には、リアム海軍基地があり、2019年に中国人民解放軍が独占的に利用できる契約が結ばれたと報道されました。カンボジア政府はこれを否定していますが、基地の近代化改修に中国の支援があったことは認めています。アメリカ合衆国は、契約にUDGが関与していたとして、資産凍結などの制裁を科しました。

ダラサコール国際空港の拡張計画では、滑走路の長さや駐機場の広さがリゾート地の空港としては過剰であるため、軍事利用の懸念が強まっています。フン・セン首相はこれを否定していますが、中国は一帯一路政策の一環として、カンボジアでの港湾、空港、都市開発を進めており、経済的、軍事的な影響力拡大が懸念されています。中国は、スリランカ（ハンバントタ港）、パキスタン（グワーダル）、ジブチ（ジブチ保障基地）などにも進出しており、南シナ海とインド洋における中国の支配力強化が懸念されています。

今後の展望

ダラサコール国際空港は、リゾート都市ダラサコールの発展を支える重要なインフラとなるでしょう。しかし、その軍事利用の可能性は、国際社会の注目の的です。今後の米中関係や、カンボジアの外交政策が、ダラサコール開発の行方に大きく影響すると考えられます。

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