ダルバク・ハーン

ダルバク・ハーン：激動の北元を駆け抜けた若きハーン

ダルバク・ハーン（1395年 - 1415年）は、北元（モンゴル帝国）の第10代ハーンとして、21歳という若さで短い生涯を終えました。明朝からは「答里巴」と記録されています。彼の治世は、明の永楽帝による度重なる侵攻と、有力部族オイラトとの複雑な関係に翻弄された時代でした。

生涯

1395年にオルジェイ・テムル・ハーンの子として生まれたダルバクは、1412年、父のオルジェイ・テムル・ハーンがオイラトのマフムードによって殺害された後、17歳という若さでハーン位に就きます。これは、当時の北元が置かれていた不安定な状況を象徴しています。

即位直後の1414年、明の永楽帝は再び大軍を率いてモンゴル高原に侵攻。ケンテイ山脈中のウラーン・ホシューンで、ダルバク・ハーン率いる北元軍とマフムード率いるオイラト軍は、明軍と激突します。しかし、この戦いも明軍の勝利に終わり、北元は更なる苦境に立たされることとなりました。

翌1415年、ダルバク・ハーンは21歳で急逝します。その死因は明らかではありません。後継には、オゲチ・ハシハの子であるオイラダイ・ハーンが即位しました。

出自に関する諸説

ダルバク・ハーンの出自については、オルジェイ・テムル・ハーンの子とする説が有力ですが、他にもエルベク・ニグレスクチ・ハーンの子とする説や、アリクブケの子孫とする説も存在します。これは、当時の北元における権力闘争の激しさを物語っていると言えるでしょう。

ダルバク・ハーンの時代背景

ダルバク・ハーンが生きた時代は、モンゴル帝国が分裂し、北元として命脈を保ちながらも、明朝の圧迫と内部抗争に苦しんでいた時代でした。特に、オイラトとの関係は複雑で、時には協力し、時には敵対するという状況が続いていました。若くしてハーン位に就いたダルバクは、このような困難な状況の中で、短期間ながらも北元を統治しようとしましたが、明朝の軍事力とオイラトの圧力に抗しきれず、志半ばで世を去りました。

まとめ

ダルバク・ハーンは、激動の時代に生きた悲劇のハーンと言えるかもしれません。彼の短い治世は、北元が直面していた苦難を象徴しており、モンゴル帝国の衰退と明朝の台頭という歴史の流れを鮮やかに映し出しています。彼の生涯は、歴史の波に翻弄されながらも、懸命に生きた一人の人間の姿を私たちに伝えてくれます。


参考文献
羽田明・佐藤長 他訳注『騎馬民族史3 正史北狄伝』（東洋文庫・平凡社、1973年3月）
岡田英弘訳注『蒙古源流』（刀水書房、2004年、ISBN 4887082436）

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