オルジェイ・テムル

オルジェイ・テムル・ハーン：北元 dynastの悲劇の皇帝

オルジェイ・テムル・ハーン（1379年 - 1412年）は、北元 dynastの第9代皇帝として知られています。彼の生涯は、モンゴル高原における覇権争いと、明朝との激しい対立に彩られていました。本記事では、彼の生涯を詳細に辿り、その功績と悲劇に光を当てます。

生い立ちと亡命

オルジェイ・テムルは、エルベク・ハーンの子として生まれました。しかし、1398年に父と対立し、さらにオイラトの圧迫を避けるため、中央アジアの支配者ティムールのもとに亡命しました。彼はティムールの明遠征に随行し、ティムールの死後も東進を続け、ビシュバリクでハーンを称しました。

ハーン即位と明との対立

オルジェイ・テムルは、オルク・テムルを廃したアスト部のアルクタイの後援を受けてモンゴル高原に帰国し、ハーンに即位しました。即位後、彼はオイラトとの間でモンゴル高原の覇権を争い、明朝に対しても強硬な姿勢を取りました。

明の永楽帝はオルジェイ・テムルを懐柔しようと試みましたが、1409年、オルジェイ・テムルは明の使者である郭驥を殺害し、明との敵対関係を明確にしました。このため、永楽帝は配下の猛将、丘福に10万の兵を与えて北元討伐を命じました。

丘福の敗北と永楽帝の親征

明軍が北上する直前、オルジェイ・テムルはオイラトの有力者マフムードとの戦いで大敗を喫し、ヘルレン川に駐屯しました。モンゴル軍は丘福率いる1000の騎兵に一度は敗北しますが、勝利に油断して深入りした丘福を伏兵で破り、丘福を含む4名の副将を戦死させました。

この敗戦に激怒した永楽帝は、1410年に50万の大軍を率いて親征を決意しました。永楽帝親征の報を聞いたオルジェイ・テムルは西方への逃亡を考えましたが、アルクタイはこれに従わず、モンゴルの部衆は東西に分裂しました。永楽帝は北元を討滅すべく西に進軍し、オノン川でオルジェイ・テムルの軍を壊滅させました。オルジェイ・テムルはわずか7騎の護衛と共に逃走しました。

孤立と暗殺

戦後、オルジェイ・テムルに大敗したアルクタイは、明朝に独自に朝貢を始めました。さらに、マフムードが明に北元攻撃を志願したため、オルジェイ・テムルは孤立無援の状態に陥りました。そして1412年、彼はマフムードによって暗殺され、その波乱に満ちた生涯を終えました。

参考文献

『蒙古源流』（岡田英弘 訳注、刀水書房、2004年10月）
岡田英弘『モンゴル帝国から大清帝国へ』（藤原書店、2010年11月）
『明史』列伝第215 外国8 韃靼
青木富太郎「ブンヤシリ」『アジア歴史事典』（平凡社、1959年）

オルジェイ・テムル・ハーンは、激動の時代に翻弄され、志半ばで倒れた悲劇の皇帝でした。彼の生涯は、北元 dynastの衰退を象徴していると言えるでしょう。

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