ダヴィド・ゲリンガス

ダヴィド・ゲリンガスは、1946年 7月29日にリトアニアのヴィリニュスで生まれた、世界的に著名なチェロ奏者です。現在はドイツ国籍を取得しています。彼は、質の高い演奏活動と教育活動の両面で高い評価を得ており、現代を代表するチェリストの一人として広く知られています。

生い立ちと音楽の道

ゲリンガスは、リトアニアの著名な音楽一家に生まれ、幼い頃からその才能を発揮しました。もともとユダヤ系の家系で、姓はゲーリング(Gering)でしたが、後にゲリンガスへと変更しています。1963年にモスクワ音楽院に入学し、巨匠ムスティスラフ・ロストロポーヴィチに8年間師事しました。この期間に、ゲリンガスはロストロポーヴィチからスケールの大きな演奏と鮮やかな音色を受け継ぎ、独自のスタイルを確立しました。

1970年、チャイコフスキー国際コンクールで優勝したことで、ゲリンガスは世界的な注目を集めました。同年には旧西ドイツへの演奏旅行、1973年にはハンガリーへの演奏旅行を行い、華々しい音楽活動をスタートさせました。1975年には西ドイツに移住し、その後も国際的な活躍を続けています。

教育活動とオーケストラとの共演

ゲリンガスは、教育活動にも熱心に取り組み、多くの後進を育ててきました。北ドイツ放送交響楽団のソロ・チェリストを務める傍ら、ハンブルク音楽院の教授として指導にあたり、1980年からはリューベック音楽大学で教鞭をとっています。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団には、彼の教え子が多数在籍していることでも知られています。

ソリストとしては、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、シカゴ交響楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、NHK交響楽団など、世界有数のオーケストラと共演しています。また、2006年4月からは日本の九州交響楽団の首席客演指揮者に就任し、同楽団との共演を重ねています。特に、2006年6月にはチャイコフスキーの交響曲第7番変ホ長調（ボガトリリェフ補筆版）を指揮し、日本初演を成功させました。

幅広いレパートリーと楽器への探求

ゲリンガスのレパートリーは非常に広く、初期バロックから古典派、ロマン派、近代、そして現代音楽まで、多様なジャンルを網羅しています。特に、クシシュトフ・ペンデレツキ、アンリ・デュティユー、リゲティ・ジェルジュ、ゴットフリート・フォン・アイネムなど、同時代の作曲家の作品を積極的に演奏し、ソフィア・グバイドゥーリナ、アルフレート・シュニトケ、ペトリス・ヴァスクスといったロシア・東欧の作曲家の作品を紹介する上でも重要な役割を果たしています。多くの作曲家が彼に協奏曲やリサイタル用作品を献呈しており、その功績は高く評価されています。

彼は、1761年製のガダニーニをメインで使用していますが、バロック期の作品ではバリトン・チェロやヴィオラ・ダ・ガンバも用いるなど、楽器に対する柔軟な感性を持っています。また、バッハの無伴奏チェロ組曲6番では、ピッコロ・チェロと呼ばれる五弦のチェロを使用するなど、独自の演奏スタイルを追求しています。最近では、ヤマハ社のサイレント・チェロを演奏会で使用し、エフェクターの研究にも取り組むなど、常に新しい音楽表現を模索しています。

アンサンブルへの貢献

ゲリンガスは、アンサンブル活動にも積極的に参加しており、2005年5月22日には、日本で開催された第3回「1000人のチェロコンサート」に、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチらと共に参加しました。また、第4回「1000人のチェロコンサート」では、ソロ演奏と指揮の両方を務め、その多才ぶりを発揮しました。

その他の活動

ゲリンガスは、数多くの録音も行っており、1989年にはグランプリ・デュ・ディスクを受賞しています。また、1992年には現代音楽への特別な功績により、シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン州芸術同盟から芸術賞を授与されました。

現在も、世界各地で演奏活動や教育活動を行っており、チェロ界の巨匠としての地位を確立しています。彼の音楽に対する情熱と探求心は、多くの音楽家や音楽ファンに影響を与え続けています。

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