チェコ鉄道680系電車

チェコ鉄道680系電車：スーパーシティを支える高速鉄道車両

チェコ鉄道680系電車は、スーパーシティの愛称で親しまれる高速鉄道サービスに使用される、強制車体傾斜式電車です。この車両は、イタリアのアルストム社（旧フィアット）が製造し、同社のペンドリーノシリーズを基に開発されました。最高速度237km/hというチェコ国内の鉄道速度記録を保持しており、交流・直流の複数の電気方式に対応しているため、将来的なドイツ方面への直通運転も視野に入れています。

開発の背景と紆余曲折

1989年、チェコスロバキアに初めてペンドリーノの試作編成が登場し、試験走行が行われました。その後も何度か試作車がチェコの路線で試験されましたが、本格的な導入計画は1995年に始まりました。当初は、アルストム（旧フィアット）、シーメンス、モラヴァスレスコ車両・ストゥデーンカ、ČKDの4社による共同開発が計画されましたが、ČKDの経営破綻により計画は中断。その後、アルストムが中心となり、ペンドリーノをベースとした車両を製造することになりました。こうして誕生したのが、チェコ鉄道680系電車です。

導入と初期のトラブル

2003年6月、最初の編成が納入され試験走行が開始されましたが、製造上の問題からトラブルが頻発しました。これにより、一時的に製造費の支払いと納入が中断されましたが、技術書の翻訳と信号トラブルが解決し、2004年2月から順次納入が進みました。しかし、導入後も680系は課題を抱えていました。承認試験では、導電流が上限を超え、軌道回路の誤作動を引き起こす可能性が指摘されました。この問題は、アクティブフィルターの設置によって一時的に解決されましたが、専門家からは軌道電流の干渉が大きいとの批判もありました。また、2005年12月の営業運転開始後、空調システムの不具合や車体傾斜システムの機能停止といったトラブルも発生し、一時的に運用から外れる事態となりました。

運用と路線展開

680系は、当初プラハ・オストラバ間のスーパーシティとして運用されましたが、その後プラハ・ブルジェツラフ間のインターシティにも充当されました。2004年には、ブルジェツラフ・ブルノ間でのテストで、チェコ鉄道の速度記録237.04 km/hを達成。その後、チェコ、ドイツ、オーストリア、スロバキアでの運行承認を取得し、国際列車としての運用も開始されました。しかし、南ルート（プラハ～ウィーン/ブラチスラヴァ）は採算性の問題から縮小。一方、北ルート（プラハ～オストラヴァ）では、直通運転区間を拡大し、2014年からはプラハ～コシツェ間の長距離列車にも投入されました。内装リニューアルも行われ、2017年6月には座席、壁、床、網棚、トイレなどが更新されました。

編成と受電方式

680系は10両編成で、そのうち4両が動力車です。各動力車には2つの駆動モータが備えられています。3種類の受電方式に対応しており、直流3000V、交流25kV50Hz、交流15kV16 2/3Hzの電化区間で運行可能です。しかし、低抵抗の保安機器を使用しているため、運行できる路線が制限されることもあります。

技術と経済

車体は最大8°まで傾けることができ、優れた加速性能を発揮します。しかし、導入当初は多大な損失を生み、その主な要因は保守費用と車両購入費の償却でした。ペンドリーノの利用促進のため運行ルートの延長や目的地の多様化が模索されましたが、オーストリア連邦鉄道との合意に失敗したこともあり、一部路線では他の車両が用いられるようになりました。

事故

2015年7月には、ストゥデーンカの踏切でトラックと衝突する事故が発生。この事故で3人が死亡し、680.003編成が大きく破損しました。

まとめ

チェコ鉄道680系電車は、導入当初から数々の課題を抱えながらも、チェコ国内の主要都市を結ぶ重要な役割を担ってきました。技術的な問題や経済的な課題を克服し、今もなお多くの乗客を乗せて走り続けています。

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