チェロ協奏曲第2番 (カバレフスキー)

ドミトリー・カバレフスキー：チェロ協奏曲第2番 ハ短調 作品77

ロシアの作曲家ドミトリー・カバレフスキー（1904-1987）が、1964年に完成させたチェロ協奏曲第2番ハ短調 作品77は、彼の協奏曲作品の中でも特に重要な位置を占める楽曲です。この作品は、ソヴィエト連邦を代表する名チェリスト、ダニイル・シャフラン（1923-2006）に献呈されました。カバレフスキーは、1954年に自身のチェロ協奏曲第1番の録音で、シャフランを独奏者として迎えており、その共演を通じて得たインスピレーションや、シャフランの芸術性を深く理解した上で、この第2番を作曲したと言われています。

概要

第1番が「ソヴィエトの青年」に捧げられた、より明快で親しみやすい性格を持つのに対し、この第2番は対照的に、はるかに大規模な構成を持ち、内容的にもより深遠で、時に晦渋とも評される複雑な音楽語法が用いられています。演奏時間はおよそ30分を要し、独奏チェロには高度な演奏技巧と深い音楽表現力が要求されます。作曲者の円熟期における、内省的かつ力強い表現が凝縮された作品と言えるでしょう。

初演

世界初演は、曲の完成から間もない1965年1月15日、レニングラード（現サンクトペテルブルク）にて行われました。独奏は献呈相手であるダニイル・シャフラン自身が務め、オーケストラはレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団、指揮は作曲者であるカバレフスキー自身が担当しました。作曲家と献呈者による初演は、この作品にとって理想的な船出となりました。

編成

この協奏曲は、独奏チェロと以下の規模のオーケストラのために書かれています。

フルート2
オーボエ2
クラリネット2
アルトサクソフォーン
ファゴット2
コントラファゴット
ホルン4
トランペット2
トロンボーン2
ティンパニ
小太鼓
シンバル
大太鼓
ハープ
弦五部

特筆すべきは、オーケストラにアルトサクソフォーンが含まれている点です。これはクラシック音楽のオーケストラとしては比較的珍しいケースであり、この作品に独特の色彩を加味しています。

構成

作品は3つの楽章で構成されていますが、これら全ての楽章がアタッカ（間をおかずに続けて演奏すること）によって接続されているのが特徴です。さらに、各楽章の接続部には独奏チェロによるカデンツァが置かれており、高度な技巧と表現力を披露する重要な見せ場となっています。

第1楽章：Molto sostenuto
ゆったりとした速度（Molto sostenuto）で開始されます。低音弦楽器、ハープ、ティンパニが重厚な持続音を奏でる中、独奏チェロがピッツィカート（弦を指で弾く奏法）によって主要主題を提示します。この主題は後にフルートへと引き継がれ、チェロはアルコ（弓で弾く奏法）で対旋律を奏でます。音楽は次第に重苦しい雰囲気へと展開しますが、突如としてテンポが変化し、チェロは技術的に高度でリズミカルなパッセージを繰り広げます。展開部の後、再び冒頭の緩やかなテンポに戻り、独奏チェロの第一カデンツァを経て、アタッカで第2楽章へと移行します。

第2楽章：Presto marcato
急速な速度（Presto marcato）による、3/8拍子の舞曲風の楽章です。主題はまずアルトサクソフォーンによって奏でられ、その後独奏チェロへと引き継がれて展開が進みます。中間部では4/2拍子へと変わり、チェロには第1楽章に登場した音形が回帰します。再び3/8拍子に戻った後、打楽器群を伴奏とするチェロの力強く情熱的なカデンツァが置かれ、そのまま間をおかずに第3楽章へと続きます。

第3楽章：Andante con moto
動きを伴ったアンダンテ（Andante con moto）で開始されます。チェロによって歌謡的な、情感豊かな主題が提示されます。その後、音楽は急速で激しい動きへと展開し、高潮に向かいますが、一時的にオーボエに主題が受け渡され、チェロは再びゆったりとした、より内省的なメロディーを奏でます。再び激しい音楽が展開された後、終盤において独奏チェロが冒頭の主題をのびやかに歌い上げ、静かに、そして思索的な雰囲気の中で曲全体が閉じられます。

カバレフスキーのチェロ協奏曲第2番は、シャフランという稀代の奏者へのオマージュであり、作曲家自身の作曲技法と表現力の深まりを示す、聴き応えのある作品と言えるでしょう。

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