チチジマクロキ

チチジマクロキ（父島黒木）

チチジマクロキ（学名：Symplocos pergracilis）は、ハイノキ科ハイノキ属に属する常緑の低木で、日本の小笠原諸島の父島にのみ自生しています。この植物は、1〜2メートルの高さに達し、特徴的な黒紫色の枝を持ち、毛が生えていないことが特に目を引きます。枝は細かく屈曲しており、その姿シルエットが独特です。

特徴

チチジマクロキの葉は、互生しており、単葉で構成されています。葉の長さはおおよそ3〜5センチメートル、幅は1.5〜2.5センチメートル程度で、先端は丸く、基部はくさび形をしています。また、葉柄は長さ1〜1.3センチメートルという短めの形状をしており、薄い革質の質感が特徴で、葉の縁は裏側にわずかに反っているのがわかります。

花の時期は10月から12月まで続き、葉の腋に単生する淡い黄色の花を咲かせます。花の直径は7〜10ミリメートルで、花冠は5つに深く裂けています。花の苞や萼裂片、そして花冠裂片の先端は円形で、縁には毛があるのが観察されます。雄蕊は多数存在し、花冠よりも長くのびています。果実は長楕円形で、長さは約15ミリメートルになり、秋になると黒く熟します。

分布と生育環境

チチジマクロキは父島特有の植物であり、全体で約50株が現存するとされています。環境省の絶滅危惧IA類(CR)に指定されており、保全が必要とされています。父島には近縁種のウチダシクロキ（Symplocos kawakamii）があり、この種は葉が大きく裏側に巻いているのが特徴です。さらに、無人黒木（Symplocos boninensis）という別の近縁種は、母島列島の向島に自生し、高さが7〜8メートルに達します。両種ともに同様に絶滅危惧IA類(CR)に分類されています。

これらの3種は全て本土のクロキに近縁であり、小笠原の植物たちの間には非常に近い遺伝的距離が認められます。本土から渡ってきた1種が小笠原で独自に進化したと見られています。

保全状況評価

この植物は現在、環境省による評価で絶滅危惧IB類 (EN)に分類されており、2000年までは絶滅危惧IA類（CR）であったことから、その生育環境の保護が求められています。今後、成功裏に保全措置が進められれば、チチジマクロキの個体数の回復が期待されます。

参考文献

• - 佐竹義輔他編『日本の野生植物 木本II』、1989年、平凡社
• - 牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
• - 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）
• - 生物多様性システム 環境省

チチジマクロキは、父島を象徴する植物の一つであり、その絶滅危惧という状況を乗り越えて、多くの人々に知られる存在になることが期待されています。

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