チヒルィーン

チヒルィーンは、ウクライナ中部のチェルカースィ州に位置する都市で、チャスムィーン川のほとりにあります。その名はウクライナ語で「叢林」を意味するとされ、面積は約14.12平方キロメートル、人口は約1万600人（2007年時点）です。

歴史

チヒルィーンは、16世紀前半にキエフ県の南部に位置するウクライナ・コサックの要塞都市として歴史に登場します。1592年にはポーランド・リトアニア共和国の王ジグムント3世から自治権を授与され、その重要性を増しました。17世紀前半には、コサックの反乱拠点として重要な役割を担い、1648年から1660年までの間、ポーランド・リトアニア共和国から独立したコサック国家の首都として機能しました。この時期、チヒルィーンはヘーチマン（コサックの指導者）の居城であり、コサック国家の政治的中心地でした。また、1648年から1712年までの間は、コサック国家チヒルィーン連隊の連隊庁所在地でもありました。

しかし、1678年には露土戦争の最中にオスマン帝国とクリミア・ハン国の連合軍によって徹底的に破壊され、大きく衰退しました。18世紀に入ると、ポーランド・リトアニア共和国の支配下に再び組み込まれましたが、ハイダマーカの反乱軍の拠点の一つともなりました。1797年には、ポーランド分割の結果、ロシア帝国に編入され、キエフ県チヒルィーン郡の中心地となりました。

20世紀初頭には、1917年から1921年にかけてウクライナ人民共和国とロシア・ボリシェヴィキの間で激しい戦場となり、その後ウクライナ社会主義共和国の一部となりました。1923年にはチヒルィーン地区の行政中心地となり、1941年8月7日にはドイツ軍に占領されましたが、1943年12月12日にソ連赤軍によって奪還されました。1954年には市制が施行され、チヒルィーン市が発足。1991年にソビエト連邦が崩壊すると、独立したウクライナの都市として現在に至っています。

経済

チヒルィーンの経済は、主に農業、食品産業、毛皮産業、建材産業（煉瓦工場）、そして建築産業によって支えられています。農業は地域経済の重要な柱であり、食品産業は地域の農産物を加工する役割を担っています。また、毛皮産業や建築関連産業も、地域の雇用と経済活動に貢献しています。

文化

チヒルィーンは、ウクライナ・コサックに関連する文化遺産が豊富に残る地です。主な史跡としては、17世紀に築かれたチヒルィーン城跡、救世主聖堂の跡、そして、コサックの指導者ボフダン・フメリニツキーの館（復元）などがあります。これらの史跡は、コサック時代の歴史と文化を今に伝える貴重な遺産です。また、チヒルィーン国立歴史文化公園も整備されており、観光客に歴史と文化を体験する場を提供しています。

参考文献

伊東孝之, 井内敏夫, 中井和夫編　『ポーランド・ウクライナ・バルト史』 (世界各国史; 20)－東京: 山川出版社, 1998年. ISBN 9784634415003
黒川祐次著　『物語ウクライナの歴史 : ヨーロッパ最後の大国』 (中公新書; 1655)－東京 : 中央公論新社, 2002年. ISBN 4121016556

外部リンク

（ウクライナ語） チヒルィーン // ウクライナの地方自治体。ウクライナ最高議会公式サイト
（ウクライナ語） フルーヒウ地区議会の公式サイト
（ウクライナ語） チヒルィーン // ウクライナ歴史辞典
（英語） チヒルィーン // ウクライナ百科事典

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