ハイダマーカ

ハイダマーカ：ポーランド支配下のウクライナにおける蜂起軍

ハイダマーカ（ウクライナ語: гайдама́ка）は、18世紀にポーランドが支配していた右岸ウクライナで活動したウクライナ人の蜂起軍、またはその構成員を指します。また、1917年から1920年にかけてのウクライナ人民共和国では、特別部隊の総称としても用いられました。

語源と背景

「ハイダマーカ」という言葉は、「暴れ者」「略奪者」「盗賊」といった意味を持つトルコ語の「haydamaq」に由来します。これは、バルカン半島で反オスマン帝国運動を繰り広げたハイドゥクと共通の語源を持っています。

ハイダマーカの蜂起の主な原因は、ポーランド政府、カトリック貴族、そしてユダヤ人管理者による、正教徒ウクライナ人に対する民族的・宗教的迫害でした。この迫害により不満を募らせたウクライナ・コサック、聖職者、農民、農奴、町人、職人、芸人などが、小規模な部隊を組織し、反政府的な蜂起を繰り返しました。

ハイダマーカが活動した主な地域は、キエフ地方、ヴォルィーニ地方、ポジーリャ地方でした。右岸ウクライナの人々に加え、左岸ウクライナのコサック、ドン・コサック、カルムイク人も蜂起に参加することがありました。

主要な蜂起

ハイダマーカによる大規模な蜂起は、1734年、1750年、そして1768年に発生しました。特に1768年の蜂起はコリーイの乱（Коліївщина）として知られ、ウクライナ語の「колі́й」（刺殺人、肉屋）に由来します。この乱は、ウクライナの文学においては自由を勝ち取る人民の象徴として美化される一方、ポーランドやユダヤの文学においては史上最悪の事件の一つとして描かれています。そのため、ウクライナ、ポーランド、ユダヤの研究史においても、ハイダマーカに対する評価は正反対となっています。

「ハイダマーカ」という用語が史料に初めて登場するのは、1717年2月22日のことです。

20世紀のハイダマーカ

ウクライナ人民共和国におけるハイダマーカは、ウクライナ化したロシア帝国軍の部隊や、軍人、民間人などによって編成されました。

1917年11月には、プストツヴィーフ百人隊長が率いるハイダマーカ旅団（Гайдамацький Курінь）が創設されました。さらに、1917年12月から1918年1月にかけて、ペトリューラ隊長が率いるスロボダ・ウクライナのハイダマーカ軍団（Гайдамацький Кіш Слобідської України）や、ペートリウ隊長が率いるコースチ・ホルディイェーンコ名称ハイダマーカ騎兵連隊（Гайдамацький кінний полк імені кошового Костя Гордієнка）が編成されました。これらの部隊は、1918年2月に正式にウクライナ人民共和国軍の一部となりました。

ハイダマーカは、18世紀の蜂起軍から20世紀の特別部隊まで、ウクライナの歴史において重要な役割を果たしました。

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