チベット (1912-1950)

チベットの歴史：独立と侵略の狭間で

チベット（チベット語: བོད་）は、ヒマラヤ山脈北部に位置する地域であり、その歴史は独立と侵略の狭間で揺れ動いてきました。1912年から1951年までの期間は、特に激動の時代でした。

独立宣言とシムラ会議

辛亥革命による清朝崩壊後、チベットは独立を宣言しました。1913年、ダライ・ラマ13世は、中国による植民地化の意図を非難し、「我々は小さい、宗教的な、独立国家である」と宣言しました。これに対し、中国はチベットの独立を認めず、両者の対立は深まりました。

同時期に、モンゴルとチベットの間で、両国の独立を相互承認する条約（蒙蔵条約）が締結されましたが、後にダライ・ラマ13世は、この条約に署名した代表は権限を持っていなかったと述べています。

1913年から1914年にかけて、イギリス、チベット、中華民国の間でシムラ会議が開催されました。イギリスは、チベットを内チベットと外チベットに分割する案を提示し、外チベットを中国の宗主権下で自治させる一方、内チベットは宗教的な支配のみを維持するとしました。しかし、内チベットと外チベットの境界線に関する交渉が決裂すると、イギリスの交渉長官であるヘンリー・マクマホンは、チベットとインドの国境にマクマホンラインを引きました。この線によって、イギリスはタワン県を含む約9000平方キロメートルのチベットの歴史的領域を併合しました。中国はこのマクマホンラインを不法だと主張し、現在もこの地域を巡る問題が続いています。

シムラ条約は3者の代表団によって締結されましたが、北京政府は外チベットと内チベットの間の国境を書くことに対する不満からすぐに合意を撤回しました。その後、イギリスは二国間協定としてシムラ条約を発効しました。

軍閥時代とダライ・ラマ13世の政治改革

軍閥時代の間、中国はチベットに干渉する力を持ちませんでした。1918年、ラサはチャムドと西カムの統治を取り戻しました。この時、チベット政府は衛蔵のほとんどと西カムを支配しており、ほぼ現在のチベット自治区の境界と一致していました。

ダライ・ラマ13世は、政治改革を推進しました。通貨や切手を発行し、チベット軍の旗を制定し、軍の増強に努めました。また、伝統医学を守るため、メンツィーカンという官立の医学校を設立しました。

ダライ・ラマ13世の死後

ダライ・ラマ13世の死後、チベットと中国の直接交渉が再開されました。中国は、ラサに事務所を設立し、職員を派遣しました。しかし、チベットは中国の一部であるという提案を拒否し、揚子江東岸の領域の返還を要求しました。

ダライ・ラマ14世期

1935年、ダライ・ラマ14世テンジン・ギャツォが誕生しました。1939年に公式式典が行われ、中国はこの式典を統括したと主張しています。しかし、チベット側は、中国の代表は他の国の代表と同じく式典に参加しただけで、取り仕切ったという証拠はないと反論しています。

1944年、第二次世界大戦中に、二人のオーストリア人登山家、ハインリヒ・ハラーとペーター・アウフシュナイターがラサを訪れ、ハラーは若きダライ・ラマの家庭教師になりました。

チベットは外交関係を積極的に展開しました。1942年には外務省を設立し、1946年には第二次世界大戦終結関連の祝賀使節を中国とインドに送りました。1947年には、インドのデリーで開催されたアジア会議に代表団を派遣し、独立国家として振る舞いました。しかし、チベットの独立に対する国際的な支持は得られませんでした。

当時のチベットは遊牧生活が中心で、国民の多くが熱心なチベット仏教の信者でした。一方、拷問や死刑方法も残虐だったという記録も残っています。

人民解放軍のチベット侵攻とその後

1949年、中国共産党が支配権を握ると、チベット政府は中国とのつながりのある全ての中国人を国外追放しました。1950年10月、中国人民解放軍はチベットに侵攻し、チベット軍を破りました。

1951年、チベット当局代表は中国政府と交渉し、十七か条協定を締結しました。この協定で、チベットを覆う中国の主権が明言されました。この後、中国は宗教を排撃し、遊牧地を奪い、漢族の大量入植を進めました。

チベット人の反発が高まり、反乱が発生しました。1959年、ダライ・ラマはチベットを脱出し、インドに亡命政府を樹立しました。

行政機構

チベットの行政においては、ダライ・ラマが内閣の閣僚を任命し、行政を監督していました。また、宗教面では、宗教長官と宗務官によって宗教管理が行われていました。

結論

チベットは、1912年から1951年までの間に、独立と侵略の間で激しく揺れ動きました。ダライ・ラマ13世の独立宣言から始まり、シムラ会議、軍閥時代を経て、ダライ・ラマ14世の誕生、そして中国人民解放軍の侵攻へと至りました。その過程で、チベットは国際社会における複雑な政治的状況に翻弄され、最終的には中国の支配下に入ることになりました。しかし、チベットの人々の独立への願いは、現在も続いています。

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