ヘンリー・マクマホン

サー・アーサー・ヘンリー・マクマホン（Sir Arthur Henry McMahon, 1862年11月28日 - 1949年12月29日）は、イギリスの陸軍軍人であり、外交官としても活躍した人物です。彼は、マクマホン・ラインやフサイン＝マクマホン協定といった、重要な歴史的出来事にその名を残しています。

生い立ちと初期のキャリア

マクマホンはアイルランド系の家系に生まれ、父は陸軍中将のチャールズ・アレクサンダー・マクマホンでした。彼は、ヘイリーベリー・アンド・インペリアル・サービス・カレッジ（イギリス東インド会社が設立したパブリック・スクール）とサンドハースト王立陸軍士官学校で教育を受けました。卒業後、イギリス領インドに赴任し、軍人としてのキャリアをスタートさせます。1896年から1905年の間には、バルチスタン、アフガニスタン、ペルシャ間の国境委員会に陸軍大佐として参加しました。

外交官としての活動

1906年、マクマホンはインド帝国の保護領としてのバルチスタンの代表に任命されました。その後、1911年から1914年までインド外務省で国務長官として勤務しました。1914年には、チベットとインドの境界画定を協議するシムラ会議に、インド全権として出席しました。この会議で、彼は言語領域や文化領域を考慮せず、イギリスに有利なようにヒマラヤ山脈の稜線に沿って国境線を引きました。これが、後に「マクマホン・ライン」として知られるようになります。当時のチベット政府（ダライ・ラマの代表）はこのラインを承認しましたが、中華民国政府（そして後の中国政府）は、この国境線を現在に至るまで認めていません。

1915年、マクマホンはカイロに転勤し、エジプト・スーダン駐在の英国高等弁務官に就任しました。第一次世界大戦中、彼はオスマン帝国の勢力を弱めるため、当時オスマン帝国の支配下にあったアラブ人有力者に接近しました。特に、メッカの太守フサイン・イブン・アリーとの間には、「フサイン＝マクマホン協定」と呼ばれる書簡のやり取りを行いました。この協定で、イギリスはフサインがオスマン帝国に対して反乱を起こす際に支援することを約束しました。

1919年、マクマホンは中東国際平和会議の英国代表コミッショナーに任命され、その後の国際政治にも大きな影響を与えました。

マクマホンが残した遺産

マクマホンの活動は、現代の国際関係にも深く影響を与えています。マクマホン・ラインは、インドと中国の国境紛争の根源となっており、フサイン＝マクマホン協定は、その後のアラブ世界の政治情勢に大きな影響を与えました。彼の外交政策は、複雑な歴史的背景を持ち、その評価は今日においても様々な議論を呼んでいます。

栄典

マクマホンは、その功績により以下の栄典を授与されました。

ロイヤル・ヴィクトリア勲章
インド帝国勲章
インド星陵勲章

関連項目

彼の活動と関連する歴史的な出来事や協定には以下のようなものがあります。

バルフォア宣言
サイクス・ピコ協定
パレスチナ問題
* 中印国境紛争

アーサー・ヘンリー・マクマホンは、軍人、外交官として、20世紀初頭の国際政治において重要な役割を果たした人物であり、その活動は今日においても、歴史的な教訓と示唆を与え続けています。

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