チベット・モンゴル相互承認条約

チベット・モンゴル相互承認条約（別名：蒙古西蔵条約、蒙蔵条約）は、1913年1月11日にモンゴルのウルガで、モンゴルのボグド・ハーン政権とチベットのガンデンポタン（ダライ・ラマを元首とするチベット政府）の間で締結された条約です。

条約締結の背景

1911年の辛亥革命によって清が滅亡すると、その旧領を巡り、中華民国とモンゴル・チベットの民族政権の間で国際的な地位を確立する動きが活発化しました。中華民国は清の旧領全体を「中国」とみなし、自身をその中央政府と位置づけ、各地の政権に服属を求めました。一方、モンゴルとチベットは、清朝皇帝の消滅によって、その支配下にあった国々が対等の独立国家になると主張しました。

このような状況下で、モンゴルとチベットは、中国とは別の独立国家として国際的な承認を得るために協力し、本条約を締結しました。

条約における中国観

当時のモンゴルとチベットにおける清朝皇帝観は、清帝が文殊皇帝として中国を統治すると同時に、仏教の保護者である転輪聖王としてモンゴルとチベットを従えているというものでした。清朝では、中国は直轄地とされていましたが、チベットとモンゴルは冊封関係という主従関係を結んだ藩部であり、それぞれの領域はダライ・ラマや諸侯によって統治されていました。そのため、中国、モンゴル、チベットの区別は明確であり、清帝に従属していても、中国の支配を受けているという認識はありませんでした。この条約の前文には、このような中国観が表れています。

条約の内容

以下に条約の主な内容をまとめます。

第一条：チベットは、モンゴルが独立自治権を宣言し、ボグド・ハーンがモンゴルを統治することを承認する。
第二条：モンゴルは、チベットの独立自治権とダライ・ラマのチベット統治を承認する。
第三条：両国は仏教の発展のために協力する。
第四条：一方の国が内外の脅威にさらされた場合、他方の国は援助する。
第五条：両国は、宗教や政府の用務で他国を旅行する国民を保護する。
第六条：両国は、両国民間の商業取引を円滑にするための便宜を図る。
第七条：商業取引上の債権は、当該国政府が認めた場合に限り、その国の国民が引き受ける。また、条約発布以前の重要な商業取引上の要求については、当該国政府が受理することがある。部落に対する債務請求は認めない。
第八条：条約に条件追加が必要な場合は、両国の全権委員が協議して決定する。
第九条：条約は調印日（チベット暦：水鼠年、モンゴル暦：皇帝推戴第二年、西暦1913年1月11日）から施行する。

チベット語資料による前文とあとがき

前文

チベット人とモンゴル人は文殊皇帝の支配下から離れ、中国とは別個の道を歩み始めた。自由で独立した政府を樹立し、両国は宗教的な繋がりと以前からの友好関係を深めるため、この条約を締結した。モンゴル側からは外務大臣代理のニクタビリクトゥ＝ダーラマ・ラプテンと国軍総司令のマンライバートル＝ベイス＝ダムディンスレンが、チベット側からはダライ・ラマの使者としてロサンガワン、ガワンチェージン、ゲンドゥンゲンツェンが署名した。

あとがき

モンゴル国政府の条約締結員とチベット政府の条約締結員が署名と調印を行った。モンゴル暦の独立第二年十二月五日とチベット暦の水鼠年十二月五日に、この条約を書き記した。

関連事項

チベット関連の取り決め
チベット・中国の国境画定／和平条約 (822年)
シムラ会談
シムラ協定
十七か条協定 (1950年)
モンゴル関連の取り決め
キャフタ会談
キャフタ協定
ヤルタ協定
近代チベット、モンゴル関連
ダライ・ラマ
チャムドの戦い
チベット動乱
内モンゴル独立運動

脚注

この条約は、モンゴルとチベットが、中国とは異なる独立した国家としての立場を主張した重要な証拠とされています。

外部リンク

水鼠1913年にモンゴル人の首都ウルガ(ur ga)において、チベット・モンゴル二者が平等の権利を確立する条約
上記Sha sgab pa所収のチベット語テキストの全文翻訳。
条約の原文テキスト発見に関する報道と解説
* Tibet-Mongolia Treaty of 1913, aproof of Tibet's independence : Interview , pha yul (Phayul.com),November 12, 2008

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