チャクリ・ナルエベト (空母)

チャクリ・ナルエベトとは

チャクリ・ナルエベト（タイ語: เรือหลวงจักรีนฤเบศร）は、タイ海軍が誇る初の航空母艦であり、STOVL（短距離離陸・垂直着陸）空母として名を馳せています。この艦名は、タイのチャクリー王朝に由来し、公式には「外洋哨戒ヘリコプター母艦」として分類されています。

来歴

第二次世界大戦後、タイは内部の武装共産主義運動および外部からの軍事的脅威に直面し、海軍の重要性は低く見積もられていました。しかし、1980年代後半から東南アジアの地政学的変化により、海軍の役割が見直されました。特に、国連海洋法条約の採択によって新たに設定された排他的経済水域（EEZ）の保護が急務となり、タイ海軍は海洋権益を維持するために小型空母の取得を検討し始めました。

当初はドイツのブレーマー・フルカン造船所に艦船を発注しましたが、契約はキャンセルされ、最終的に1992年にスペインのバサン社に発注されました。ここでの設計は、スペイン海軍向けの艦船「プリンシペ・デ・アストゥリアス」の縮小改良型となっています。

設計と能力

チャクリ・ナルエベトは、長船首楼型の船体デザインで、主船体は14の水密区画に分かれています。主機関はCODOG方式を採用し、2軸推進に変更されており、これはナレースワン級フリゲートと同系列となっています。

航空運用

飛行甲板は165メートル×30.5メートルで、前端にはスキージャンプ勾配が設けられています。この甲板は、ハリアー艦上攻撃機やS-70B-7哨戒ヘリコプターなどを運用可能で、格納庫にはハリアーなら10機、シーキング・ヘリコプターなら15機収容できます。しかし、2006年にはハリアーの運用が終了し、現在はヘリ空母として活動しています。

輸送揚陸と防御機能

ハンガーを車両甲板として使用することで、装甲兵員輸送車を30両以上収容でき、陸戦部隊は最大675名が乗船可能です。また、艦防御機能は予定された装備の一部を搭載できず、当初は機銃のみでしたが、後に近接防空ミサイルシステムが追加されました。

艦歴と運用

チャクリ・ナルエベトは、アジア通貨危機の影響で装備が制限され、活動にも制約がありました。しかし、2004年のスマトラ沖地震の際には救援活動を行い、艦の役割を果たしました。最近では2018年にシンガポールの国際観艦式に参加し、その存在感を示しました。ただし、ハリアーの運用が終了したため、現在はヘリコプターのみの運用に限られています。

このように、チャクリ・ナルエベトはタイ海軍にとって欠かせない存在であり、国の海洋戦略への寄与が期待されています。

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