チャスラヴ・クロニミロヴィチ

チャスラヴ・クロニミロヴィチ：中世セルビアの再興者

チャスラヴ・クロニミロヴィチ（890年代 - 960年頃）は、10世紀のセルビア公であり、分裂状態にあったセルビアを再統一し、その領土を大きく拡大したことで知られています。ヴラスティミル朝の最後の君主として、中世セルビアの建国者の一人と見なされています。

生い立ちとブルガリアでの生活

チャスラヴは、851年から880年にかけて共同公の地位にあったストロイミルの孫にあたります。父はクロニミル、母は第一次ブルガリア帝国のボリス1世が選んだブルガール人の貴族女性でした。彼はブルガリア帝国の首都プレスラフで育ち、シメオン1世の宮廷で教育を受けました。

セルビア公としての復帰

924年、チャスラヴはブルガリア軍と共にセルビアへ送られ、当時のセルビア公ザハリヤをクロアチアへ追放しました。シメオン1世はセルビア人領主たちを捕らえ、セルビアをブルガリア帝国に併合しましたが、927年にシメオン1世が亡くなると、チャスラヴはセルビアに脱出し、セルビア公国を再興しました。

セルビアの拡大と東ローマ帝国との関係

チャスラヴは東ローマ皇帝ロマノス1世レカペノスに臣従し、財政的・外交的な支援を得ました。彼の治世下で、セルビアはトラヴニアやボスニアの一部を併合し、領土を拡大しました。また、東ローマ帝国との緊密な関係により、セルビアには東ローマ帝国の文化や宗教の影響が浸透しました。この影響が、後の東西教会分裂において、セルビアが正教圏に属することになる要因の一つとなりました。

マジャル人との戦いと死

934年と943年、マジャル人がバルカン半島に侵攻し、東ローマ帝国領を荒らしました。コンスタンティノス7世の『帝国統治論』によると、チャスラヴはマジャル人の侵攻に対して果敢に戦い、ドリナ川河畔での戦いでマジャル人を打ち破りました。しかし、その後、マジャル人の未亡人による復讐を受け、親族と共にサヴァ川に投げ込まれて殺されました。

死後のセルビア

チャスラヴの死後、セルビアは再び分裂し、各地の貴族が割拠するようになりました。971年から976年の間には、東ローマ帝国によってラシュカのカテパニキオンが設置され、一時的に東ローマ帝国の支配下に入りました。その後、ボスニアが新興勢力として台頭し、ヨヴァン・ヴラディミルがセルビア貴族の中で勢力を拡大しました。

チャスラヴの死はセルビアの統一を再び失わせましたが、彼の再興したセルビア公国は、その後のセルビアの歴史において重要な基盤となりました。

後世への影響

セルビアの作家ステヴァン・スレマツは、1903年にチャスラヴを主人公とした小説『大ジュパンチャスラヴ』を著しています。

家族

ドゥクリャ司祭年代記によれば、チャスラヴには娘が一人おり、後のラシュカ領主ティホミルに嫁いだと言われています。

チャスラヴ・クロニミロヴィチは、セルビアの歴史において、その再統一と領土拡大に貢献した重要な君主として記憶されています。

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