チャッツワース・ハウス

チャッツワース・ハウス

チャッツワース・ハウス（Chatsworth House）は、イギリス・ダービーシャー州デイルに位置する壮大なカントリー・ハウスです。デヴォンシャー公爵キャヴェンディッシュ家が代々居住してきたこの館は、16世紀に建設が始まり、17世紀末にはバロック様式に改築されました。場所はベイクウェルの東、約6.5キロメートルの地点にあります。

歴史的背景

チャッツワースは、エリザベス・ハードウィック、別名「ハードウィックのベス」として知られる人物と、彼女の2番目の夫ウィリアム・キャヴェンディッシュにより、1552年頃に建設が開始されました。館は1560年代に完成し、1568年にはスコットランド女王メアリーがここに軟禁されていたことから、彼女もこの地を訪れていたとされています。初代デヴォンシャー公爵であるウィリアム・キャヴェンディッシュの代には、1686年から1707年にかけて著名な建築家ウィリアム・トールマンによって大規模な改築が行われ、現在見ることができる美しいバロック様式の館が完成しました。さらに、1820年代には6代公爵の手によって増築も行われました。

庭園と領地の魅力

チャッツワース・ハウスを訪れる人々にとって、広大な庭園も大きな魅力の一つです。現在の庭園は105エーカー（約42ヘクタール）という広さで、石塀と柵に囲まれています。初代デヴォンシャー伯爵の手により、視界を妨げる丘が移動され、その結果、約290メートルの長さの運河が掘られたことも興味深い点です。

特に注目したいのは、4代デヴォンシャー公爵が整形庭園を廃止し、ランスロット・ブラウンによる風景式庭園を設計したことです。19世紀に入ると、ジョセフ・パクストンの手によって、庭園は華やかさを増し、特に「帝国噴水」が有名です。高さ90メートルにも達するこの噴水は圧巻で、チャッツワースのシンボルとも言えます。

岩倉使節団の訪問

1872年、明治5年に日本の岩倉使節団がこの地を訪れることになります。シェフィールドの鋼製品工場見学を終えた後、使節団はチャッツワース・ハウスに到着しました。館の主、第7代デヴォンシャー公爵ウィリアム・キャヴェンディッシュの案内で、彼らは館の内部を見学し、数多くの名画や豪華な装飾が施された部屋を鑑賞しました。随行した久米邦武は、この館の美しさに感銘を受け、その景観を称賛しています。

現在の状況

現在、チャッツワース・ハウスはデヴォンシャー公爵の住所として知られ、第11代公爵アンドリュー・キャヴェンディッシュとその配偶者デボラによって近代化が進められました。そして、観光地としても多くの人々に愛され続けています。チャッツワース・ハウスの訪問者は、壮麗な庭園の散策はもちろん、30以上の美しい部屋やヨーロッパ最大級の絵画コレクションを鑑賞することができます。

内部はすべてバロック様式で装飾され、特にペインテッド・ホールや数多くのステイト・ルームの天井には、優れた芸術家たちによって描かれたフレスコ画があります。また、ウィリアム・ケントのデザインによる美しい家具も見られます。

映画での利用

チャッツワース・ハウスは、映画のロケーションとしても知られています。2005年には『プライドと偏見』の舞台の一つとして使用され、2008年には『ある公爵夫人の生涯』の撮影にも利用されました。

チャッツワース・ハウスは歴史的価値に加えて、美しい庭園と建築様式、さらには多くの文化的背景を持つ魅力的なスポットです。訪れることにより、イギリスの貴族文化や歴史に触れる貴重な体験ができることでしょう。

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