チャップリンの女装

『チャップリンの女装』（原題: A Woman）は、1915年にエッサネイ社から公開されたチャールズ・チャップリン監督・主演の短編サイレント映画です。チャップリンの映画出演としては45作目に当たり、キーストン時代を含めると、『多忙な一日』、『男か女か』に続く、3本目の女装作品であり、かつ最後の作品となります。

あらすじ

物語は、エドナが父、母と共に公園へ遊びに行く場面から始まります。公園で父は女友達に目を隠されている隙に財布を盗まれてしまいます。目隠しされたままの父は、偶然居合わせたチャーリーを女友達と勘違いし、誘い出して池に突き落としてしまいます。一方、母とエドナは父を置いて、チャーリーを家に招待し食事を振る舞います。しかし、父が友人を連れて帰宅したことで、チャーリーとの間に騒動が勃発。チャーリーは事態を収拾しようと、二階に隠れてドレスを着て髭を剃り、女性に変装します。父と友人は女装したチャーリーに魅了されますが、やがてスカートが外れて正体が露見。母とエドナが全てを明かし、一件落着となるかと思いきや、父の怒りは収まらず、チャーリーは家から追い出されてしまうという結末を迎えます。

制作背景と評価

映画史家のデイヴィッド・ロビンソンは、「女装は異様なくらい彼（チャップリン）に似合った」と述べていますが、その一方で、本作は公開当時から賛否両論を呼びました。特に北欧では1930年代まで上映禁止となり、アメリカでも「悪趣味」、「下品」、「粗野で、品がなくて、猥褻で許しがたい」といった酷評が相次ぎました。これらの批判はチャップリンに一時的な打撃を与えましたが、彼はすぐに立ち直り、「奴らに目にものを見せてやろう」と周囲を鼓舞したと伝えられています。チャップリン自身が映画の中で女装を演じるのは本作が最後となりましたが、その後も『犬の生活』（1918年）や、実現はしませんでしたが『一日の行楽』（1919年）といった作品で女装が登場する予定がありました。

また、チャップリンは本作から、エッサネイ社ナイルズ撮影所の代替として、ブラッドベリ・マンションを撮影所として使用を開始しました。ここは後に正式にマジェスティック撮影所となります。

キャスト

チャールズ・チャップリン - 紳士 / ノーラ・ネトラッシュ
チャールズ・インズリー - 父
マータ・ゴールデン - 母
エドナ・パーヴァイアンス - 娘
マーギー・ライガー - 父の女友達
ビリー・アームストロング - 父の友人
* レオ・ホワイト - 公園の紳士

日本語吹替版

チャップリンのデビュー100周年を記念して、2014年10月26日にスター・チャンネルで、日本チャップリン協会監修による日本語吹替版が放送されました。

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