チャンドラグプタ (マウリヤ朝)

チャンドラグプタ：古代インドの礎を築いた王

概要

チャンドラグプタ（紀元前340年頃 - 紀元前298年頃）は、古代インドのマガダ国で興ったマウリヤ朝の初代の王である。彼は、古代ギリシャの資料でも複数の名前で知られ、特に「サンドロキュプトス」や「サンドロコットス」として記憶されている。マウリヤ朝の治世中、チャンドラグプタは西方のセレウコス朝との交渉を通じてインド北西部を広大な領土に拡大した。

来歴

チャンドラグプタの出自は諸説あり、バラモン教系の資料ではシュードラ（カースト最下位）とされ、仏教系ではクシャトリア（戦士階級）と見なされている。彼の出自に関する不明瞭さは、マウリヤ朝が仏教を保護していたことに起因している。これにより、バラモン教の高位者たちから軽視されることがあったと言われており、正確な事情は分からない。

当時のマガダ国はナンダ朝に支配され、変革を求めて身分秩序が混乱していた。チャンドラグプタはこうした状況の中で台頭した。彼は、アレクサンドロス大王の指導者下で活動していたことがあるとの伝説もあるが、具体的な証拠は存在していない。

マウリヤ朝の建国

紀元前4世紀末、チャンドラグプタはナンダ朝に対抗し、挙兵する。ナンダ朝の王ダナナンダは反乱を鎮圧するために派遣した軍を、チャンドラグプタが撃退し、首都パータリプトラを占拠。ダナナンダを倒してナンダ朝を滅ぼし、新たにマウリヤ朝を建国した。この反乱には思想家カウティリヤが大きく関与していたとされている。

セレウコス朝との対立

紀元前317年、アレクサンドロスの後継者としてセレウコス1世がインド北西部に侵攻したが、チャンドラグプタは大規模な軍を動員してこれを迎え撃ち、優位な条件で協定を結んだ。この結果、チャンドラグプタはインダス川の対岸に位置するアリア、アラコシア、ゲドロシア、パロパミソスの4州を獲得し、セレウコス1世に戦象500頭を提供することになった。

ジャイナ教への信仰

晩年、チャンドラグプタはジャイナ教に帰依し、出家して聖人バドラバーフの弟子となったと言われている。彼は出家後にプラバーカンドラと名乗り、苦行に励んだ末に絶食死したとされている。このことは、彼が信仰心を持っていたことを証明する要素となっている。

統治と評価

チャンドラグプタの統治スタイルは非常に強権的であったとされ、彼の宮殿には武力的な雰囲気が漂っていた。特に、彼が異国から解放した人々を自らの奴隷にしたとの記録も存在している。また、カウティリヤは彼の側近として、後に「インドのマキャヴェリ」と称される思想家であった。チャンドラグプタの暗殺を恐れるあまり、毎晩寝所を変えていたという逸話も残っており、当時の彼が恐れられていたことを物語っている。

結論

チャンドラグプタは歴史において重要な役割を果たし、彼の治世はインドの5つの河川の地域に広がる大帝国の基盤を築くことに成功した。彼の行った政策や信仰は、後続の王たちにも影響を与え、その後のインドの歴史に深く刻まれている。

もう一度検索