チャーリー・パットン

チャーリー・パットン：デルタ・ブルースの先駆者

チャーリー・パットン（Charley (Charlie) Patton, 1891年 - 1934年）は、デルタ・ブルースの黎明期を代表するギタリストであり、シンガーです。1930年代以前の黒人コミュニティにおいて、最も人気のあるブルース歌手の一人として知られています。

生い立ちと音楽との出会い

1891年（正確な年は諸説あり）、ミシシッピ州ハインズ郡エドワーズ近郊で、12人兄弟の一人として生まれました。家族はジャクソンとヴィックスバーグ間の農場で、農園労働者や小作人として生活していました。

1897年、一家は北へ100マイル移動し、ドッカリープランテーションに移住。そこで綿摘みなどの仕事に従事する傍ら、パットンは密かにパーティーや酒場へ足を運び、音楽に触れていきました。チャットマン一家（ミシシッピ・シークス）との共演や、ギタリストのヘンリー・スローンからギターを学ぶことで、その腕を磨いていったと言われています。ウィリー・ブラウン、トミー・ジョンソン、ジョー・マーティンといったミュージシャンとも頻繁に共演し、後のサン・ハウスやハウリン・ウルフ、ロバート・ジョンソン、ヘンリー "サン" シムズらにも影響を与えました。

レコーディングと名声

1929年6月14日、パットンはインディアナ州リッチモンドのゲネット・レコードで初のレコーディングに臨み、14曲を録音しました。その中から「ポニー・ブルース」が「バンティー・ルースター・ブルース」とのカップリングでパラマウント・レコードから発売され、彼の代表曲の一つとなりました。その後もパラマウントで2度のレコーディングを行い、1929年の冬のセッションにはフィドラーのヘンリー・シムズが、1930年のセッションにはウィリー・ブラウンが参加しています。

晩年と死

過度の飲酒と喫煙、不規則な生活が祟り、パットンの体調は徐々に悪化していきました。1934年1月、ニューヨークで内縁の妻バーサ・リーと共に最後のレコーディングを行い、「34ブルース」や「オー・デス」といった楽曲を残しました。同年4月28日、ミシシッピ州サンフラワー郡インディアノラ近くのプランテーションで心臓発作により死去。死亡証明書によれば、死因は僧帽弁障害でした。亡くなるまでの数日間は、説教をして過ごしたと伝えられています。

ロバート・ジョンソンとの比較と影響

1960年代にローリング・ストーンズやクリームによってロバート・ジョンソンが広く知られるようになりましたが、生前のジョンソンは無名に近く、実際にはチャーリー・パットンのほうが黒人社会で圧倒的な人気を誇っていました。大柄な父親とは対照的に小柄な体格でしたが、その声はアンプなしでも遠くまで届いたと言われています。放蕩な生活を送る一方で、自らの生き方に苦悩し、何度か説教師を目指したこともあったそうです。

B.B.キングは、ロバート・ジョンソンについて尋ねられることが多い中で、ジョンソンに敬意を払いつつも、自身のアイドルはチャーリー・パットンであると答えています。

チャーリー・パットンの音楽は、デルタ・ブルースのルーツを体現しており、その影響は今日に至るまで色褪せることはありません。

参考文献

「ディープ・ブルーズ」 ロバート・パーマー著、五十嵐正訳 シンコー・ミュージック ISBN 4-401-61648-0

外部リンク

トレイル・オブ・ザ・ヘルハウンド - チャーリー・パットンのページ （英語）
チャーリー・パットン、フォークシンガー (エリヤ・ウォルドによる) （英語）
R. クラムによるコミック （英語）
"チャーリー・パットン". Find a Grave. 2010年8月28日閲覧。 （英語）
ジャック・ホワイトのレーベルによるパットン作品全集の紹介サイト（英語）

もう一度検索